第72話
俺はその練り上げた魔力をアイシャの傷口に集中させ、鍵言を述べる。
「ヒール」
「なっ、なんだと.....跡が一切残らずに完治している.....」
「まぁ、こんなもんだろ」
俺は緊張から解放された事を実感するかのようにため息をこぼした。
「ミツルさん.....あなたの魔力はいったいおいくつなのでしょう」
「え、あー.....」
魔力はもちろん高いがそれ以上に重要なのは光の属性値だ。その研究結果は公になっていないので仕方ないが。
「いえ、このように聞くのはあまり宜しくありませんね。我慢しますとも、ですが!これは言わせてください。素晴らしい、なんなら私にその技術を教えて欲しいくらいだ」
「聞かないで置いてくれるのはとてもありがたい。それに教えるのも大した手間ではないが俺のやり方で改善が見られるかどうかは怪しいぞ」
なぜなら、ミツルの魔法はイメージで発動しており、今のヒールだって前世の細胞分裂をイメージし、傷の治癒を早めた結果だ。
そもそも、ヒールではこのくらいしか治らない、ハイヒールならばこれくらい、などの『イメージ』が出来てしまっているゴーランほどのベテランになるとその矯正は難しいものになるだろう。
「そう、ですか.....それよりいいものを見せてもらえたので私も何か出来ることはないでしょうかね」
ここで俺はフッと頭に浮かんだ言葉を口をついて発してしまった。後で気づいたがこれもきっと確率変動者の影響だろう。
「じゃあ、俺の教え子のエリックという子に回復魔法の基礎だけでもいいから教えてあげてくれ。俺のヒールは特殊なので.....」
「それくらいならお安い御用です。明日の午前中なら、予定が全く入っていませんが.....」
残念ながらその時間帯は授業中だ。俺はエリーナ校長に目を向ける。するとため息をつきながら、
「はぁ.....仕方ないですね。明日のエリックくんの午前の授業は免除とします」
さすがエリーナ校長、話がわかる。
「では、明日の午前にまた伺いますね」
そう言ってゴーランはニヒルな笑いをこちらに向けてくる。それに応えるように充も微笑み返した。
「あぁ、よろしく頼む」
「では、自分はこれで失礼しますね。エリーナさん、アイシャさん、ミツルさん、ありがとうございました」
「いえ、こちらも面白いものが見れたので良かったですよ」
エリーナ校長はそう言って人当たりの良い笑みを返す。それより俺のヒールを面白い呼ばわりとは.....
ゴーランさんは部屋を出た後に一度振り返り、
「あまりのすさまじさに忘れていましたがミツルさんのその回復魔法はあまり人前で使用しない方がいいでしょうな」
「忠告ありがとうございます」
「では、また」
そして今度こそ部屋を去っていった。




