第68話
俺は決死の覚悟でライリーに確率変動者を使用した.....
結果から言おう。なんとか生きていた。
だが、その未来を掴み取ろうとした瞬間のあの凄まじい吐き気と頭痛、それから自分の精神が金ヤスリでゴリゴリ削られていくような感覚は二度と味わいたくない。俺は確率変動者の使用後は数分間気絶してしまい、目覚めた時は冷たい床の上に倒れていた。
「.....まぁ、そりゃそうなるわな.....こんな未来を自力で掴み取る可能性なんかゼロに等しいよ.....むしろほんの少しでもこうなる未来があったことに驚きだ」
この確率変動者はその人物の未来に一欠片でもその可能性が無ければ意味が無い。無いものはないのだから。
だが、ライリーは俺が受けた苦痛の強さから察するに、果てしなく極小確率だったが、その未来が存在したのだろう。
ライリーの望んだ戦闘スタイルは果てしなく願望に近いものだった。
ライリーの提出した宿題にはびっしりと文字が書かれていたが要約すると、まだまだ自分は強くなれるし、鍛え無ければならないこともある。だからこれといって確立した戦闘スタイルは無い。と言ったものだった。
だが、この宿題の最後に『もしも』と、控えめな前置きをして、こう書き綴られていた。
『もしも、僕が、全属性持ちだったらもっともっと、たくさんの戦略が思いつくかも知れませんね』と。
俺は未だにダルさを全面的に主張してくる体に鞭打ち、一思いに体をおこす。そのだるさとは対称的に、多少の達成感を覚えていた。いや、自己満足と言ってもおかしくは無いかもしれない。
なにせ、今俺のしている行動は、
『誰にも知られずみんなの手助けしてるんやで。そんな俺かっこいー!』
みたいな行動だ。
「.....まぁ、本当に最終的には本人の頑張りに帰結するんだけどな」
俺はこの後襲いくるであろう困難を思い浮かべ、ため息をこぼす。
このスキルはその未来を引き寄せる『だけ』のスキルだ。
アフターケアもあったもんじゃない。
つまるところ、その望んだ未来に応じた困難、いや、試練とでも言うものが待っている。これをクリア出来なければ結局、何も変わらないのだ。
もちろん、全力で俺もサポートはするが、本人にしか出来ないこともあるだろう。その時は俺は傍観することしか出来ない。
「まぁ、今考えても仕方ないかな。とりあえず今日の放課後まではアイシャと一緒に授業を受けようかな」
俺は学校まで転移しようと考えたが、今は授業中だ。いきなり現れられたら迷惑だろう。それにこのなんとも言えない気持ち悪さを紛らわすために外気に当たりたいと思い、寄り道をしながら、学校へ向かうことにした。




