第57話
舞い上がった砂埃がだんだんと散っていく。そこには二つの影が見える。
片方は床に倒れ伏しており、片方は悠然と立っていた。
「ライリー、なかなかいい攻撃だったな。だけど俺に勝つにはあと数歩足りなかったな」
倒れているのはライリー、それを上から見ているのが充だった。
やがて、砂埃が完全に晴れ、勝敗が誰の目にも決した時、訓練場の観戦席からとてつもない歓声が降ってくる。
「うおぉぉ!!すげえ!すげえよ!あの攻撃を受けて無傷なんて!」
「な、なにをしたっていうの?」
皆今起きたことについていけず困惑している。そこへいきなり声がかかる。
「あれは見えなくても仕方ないかもしれませんね.....」
そこには面白そうだし授業めんどくさいからという酷い理由で来たエリーナ校長とそれに引きずられてきたアイシャがいた。
「えぇ、あの魔法が放たれた後にミツル先生の前にあの魔法を丸々覆い尽くすほどのワープホールが展開されていました。そしてそのもう片方のワープホールはあの男の子の頭上に展開されててそこからでてきた魔法は元よりも何倍も強力なものになっていたわ。一体どういう仕組みなのか.....」
そう、ミツルがやった事はエイト・クレイムくんを軽くあしらった時と大して変わっていない。
普通に魔法をワープホールで移動させただけだ。しかし、今回充はもう一つ細工をしていた。ワープホール間を通る一瞬で時間を圧縮したのだった。時間の圧縮、それは脅威の技術である。そもそも動いている物にはエネルギーが発生する。それは魔法も同じだ。それを圧縮して放つと瞬間的にとてつもない威力の魔法が放たれる。
「おーい、ライリーくん?大丈夫か?」
そう言いつつ俺はライリー君の目の前でしゃがみこみ、顔を覗き込む。返事はない。恐らく、自分の魔力を使い切ったのか、結界で受け流せる魔法の威力を越してしまったかのどちらかだろう。所々、服が破けて傷ついているのを見ると、おそらく後者だろうと判断する。
「どうしようか、ダメージによる気絶ならとりあえずヒールかけるか、ヒール!」
充がヒールを使い、しばらくするとライリーくんが目を覚ました。
「ん、ぅん.....?ミツル.....先生.....?」
「お、目が覚めたか、お疲れ様だな。とりあえずヒールはかけたけど魔力とか回復しきって無いはずだから少しの間安静な」
「はい、分かりました.....」
そう言ってライリーは自分の体を見下ろす。胸元はばっさりと開き、ズボンも所々破けている。それを見たライリーは遠目から見てもハッキリわかるほど顔を真っ赤にし、
「きゃあぁぁぁ!!!!」
悲鳴をあげた。
「おい!どうしたんだライリー!」
「来ないでください!というかこっち見ないでください!」
「は!?どういうことだよ!見られて恥ずかしいものなんて.....」
充は今一度ライリーの状態を確認する。服が破けており、所々肌が露わになっている。そしてばっさりと空いた胸元には小ぶりだが確かな膨らみが.....
「ふく.....らみ.....?.......はっ!?お前っ、もしかして!」
「とりあえずあっちむいてくださいぃぃ!!」
充はばっと目を背け転移魔法をライリーに使い、他の生徒達に見られる前に保健室に転移させた。
「ふぅ.....いやいや、仕方ないよな。だってライリーくん、いや、ライリーちゃんだったんだもんな」
充はその現実を噛み締めながら、保健室へと向かった。




