第55話
何とか転移を使い、遅刻は免れた。だが転移先の1年Sクラスの生徒達は目を点にして驚いている。
「いま.....どこから入ってきたんだ.....?」
「お、俺の目には突然そこに現れたように見えたけど」
「でもワープホールでも無い転移になるとかなり熟練したものじゃないと使えないわよ!?」
クラスがだんだんざわつき始める。それを充は手を2回叩いてしずめる。
「変な現れ方をしてすまなかった。よし、これでこの件は終わり!授業始めるぞー.....って言ってもなぁ。うん、みんなにアンケートだ。座学と訓練場で体を動かしながら実践するのどっちがいい?」
充がそう問いかけると生徒達は顔を見合わせ、戸惑いながらも意見をまとめ始める。
「はい、先生、満場一致で後者が良いそうです」
その事をこのクラスの委員長的な男の子がみんなの意見をまとめて伝えてくれた。やはりみんな育ち盛りの子供だ。じっとしているよりも体を動かす方が好きなのだろう。
「わかった、じゃあ訓練着に着替えて訓練場に集合な」
『はい!』
訓練着というのはこの学校の訓練場のみにおいて効果を発揮する服のことだ。この服を着ていると物魔ダメージを全て訓練場内に張り巡らされた巨大な結界により受け流される仕組みになっている。
充はみんなが着替えて訓練場に集まる前に特Sクラスに寄ることにした。充が扉を開くとアイシャとエリーナ校長がだべっていた。
「二人とも、おはよう」
「あー、ミツルさんおはようございますー、これから授業ですかー?」
エリーナ校長は間の伸びた声で俺に話しかけて来た。
「あぁ、そうだ。これから生徒達と遊んでくる」
「うふふ、楽しそうですね。でも手加減はしてあげてくださいね?」
「分かってるさ」
俺とエリーナ校長が他愛もない話をしているとアイシャが話しかけてきた。
「ミツル、おはよう。昨日は.....その、ごめんね?」
「ん?あぁ、気にするな。別に迷惑でもなかったし」
「そうですか」
「それよりアイシャ、いつの間に俺の家を出たんだ?」
「朝早くに起きて寮に戻ったのよ。それからかなり早く学校に来て昨日忘れていった宿題をやってたの.....」
「あー、それは悪い事をしたな。今度また家に来た時はゼノに魔法を教えてもらえばいいよ」
「ゼノさんですね。覚えておきます」
と、ここまで話したところで充は壁にかけてある時計を見上げる。
「っと、そろそろみんな集合するかな。てことで俺は行ってくるわ。また後でな」
「うん、また後で」
アイシャはそっと微笑み、手を振った。それに対して俺は少し照れくさくなり、背を向けて訓練場に向かった。
「.....お二人共ラブコメしてますねぇ」
というエリーナ校長の言葉だけが空気に溶けて消えていった。




