第26話
ここはアスメル王国国王ベインの執務室。
今その扉がノックされた。
「入れ」
「失礼致します」
そう言って入ってきたのは騎士団長のテイルだった。
「テイルか、何の用だ」
「はっ、国王陛下宛の手紙をお持ちしました」
「手紙?いつもはメイドに持ってこさせてたであろう?」
「はい、これが件の手紙なのですが......」
そう言ってその手紙を差し出した。ベインはそれを受け取り封蝋の紋章を確認する。
「これは.....ルナリアからのものか?」
「はい、恐らくそうであるかと」
封蝋の紋章はベイン自身が使う物、つまりアスメル王国の王族だけが使える紋章が使われていた為、ルナリアから送られてきた物だと判断した。
ベインはその場で封を切り、中身を確認する。
中には3枚の手紙が入っていた。
ベインは暫く黙ってその手紙を読んでいたが、やがて顔を上げこう言った。
「そう言えば最近巷を騒がせていた盗賊団はなんと言ったか」
「はい、餓狼の遠吠えですね。それについても報告があります。先日、町の外れの倉庫にて餓狼の遠吠え団員と思わしき死体が多数見つかっております」
「それはほとんどが雷に打たれたように焦げていて一つだけスパッと首が飛んでたりしたんじゃないのか?」
その言葉を聞いたテイルは首を縦に振った。
「はい、その場にあった死体の全てが雷に打たれたような痕跡がありました。あの数をまとめて相手にできる魔法職......恐らく範囲魔法の得意なリーフのジョブを持っている者がやったものかと.....ですがなぜ陛下がそれを?」
「これを見るといい」
テイルがそうベインに問いかけるとベインは一枚目の手紙をテイルに渡した。
その手紙にはまず丁寧な文字で当たり障りのない内容が綴られていた。
テイルが更に読み進めていくととんでもない一文がテイルの目に飛び込んできた。
「なっ!?」
テイルはつい大きな声を出してしまったことを恥じ、咳払いをした。
「申し訳ございません。つい驚いてしまいました」
その手紙にはルナリアが攫われたこと、充が餓狼の遠吠えをルナリアを助けるついでに根絶したことなど全てが事細かに書かれていた。
「テイル.....お主はどう思う?」
「どう.....とは餓狼の遠吠えを一網打尽にした事でしょうか?」
「違うわい!わしの可愛い可愛いルナリアを盗賊なんぞに攫われたことじゃい!やはり見張りを立てておくべきだったか.....」
テイルはベインの親バカぶりに驚きつつもまともな返事を返す。
「もちろん王女殿下が攫われたことは誠に遺憾ですが、騎士団すら毎回見つけても逃げられてしまうほどの手練を一網打尽にしてしまうほど......正直見張りを付けたとしても結果は変わらなかったでしょう」
ベインはそれを聞くと親バカモードから国王モードに戻る。
「やはりそうか......本当にあいつは何者なのだろうか」
「さぁ.....」
「まぁ良い、他にも要件が書かれていてな。あのー......ルナリアに昔からつけていた執事......」
「オスカーの事でしょうか?」
「そうそう、そのオスカーとメイド2人をルナリアの所に異動させてやれ」
「異動.....ですか?」
「あぁ、あの男が家を買ったらしくてな。そこで色々あって孤児を拾ったらしくてな」
「色々.....ですか」
「あぁ、色々だ。で、そこで仕事を教えたいらしくてな。そんな訳だから手練を用意してくれ」
「わかりました.....ですがミツルさんは何故こんなにも早く家を買えたのでしょうか?確か情報部によるとつい1週間ほど前に田舎から出稼ぎに来たはずですが.....」
「それだけの腕があっただけの事......それにわしからの依頼料何かもあるだろうしな。何よりあいつは異常だからな」
「.....それもそうですね。では、私はこの後部下の訓練があるので、これで」
そう言ってテイルは部屋を出た。




