第25話
「ミツル、おはよ」
充がテルを起こし、紅茶を飲んでいるとチヅルが起きてきたようだ。
「おはよう、チヅル。他のみんなは?」
「昨日疲れてたみたいでまだ寝てる」
「そうか。じゃあそろそろ昨日のあまりのスープ温め直すかな」
そう言ってミツルは席を立つ。すると、チヅルが後ろからついてきた。
「私も手伝う」
「温め直すだけだからリビングで待っててもいいんだぞ?」
充がそう言うと、チヅルは首を左右にふった。
「それでも充の近くにいる」
(随分と懐かれたもんだな)
「そっか。じゃあ行こうか」
そして二人で台所に向かい、充がスープを温め、器にスープをよそいリビングに戻ると、ルナと子供達が起きてきていた。
「皆おはよう。昨日のあまりだけど朝ごはんだぞー。しっかり食べろよー」
「ミツル様おはようございます......」
「ミツルさんすみません....起きるの遅くて.....」
「気にしなくていいさ。もう少しでメイドさんと執事を雇うから仕事はこれから覚えてくれ。ほら、冷めないうちに食べるぞ」
「じゃ、いただきます」
「いただきます.....?」
「あー.....つい癖でな」
「いただきますって言うのはこの食べ物に対する感謝の言葉なのよ。そして食べ終わったあとにもご馳走様って言う作ってくれた人に対する感謝の言葉もあるわ」
「へー.....ゼノちゃん物知りだね」
「べ、別に?たまたま知ってただけだし.....」
「じゃあミツル様にならって改めて、いただきます」
『いただきます』
こうしてこの屋敷ではものを食べる前にはいただきますとご馳走様を言うのが習慣となった。
全員がご飯を食べ終わり、食器の片付けも終わると、充とゼノは庭に出てゼノに重力魔法を教えてもらうのだった。
充とゼノは庭にでて、向かい合った。
「じゃあ準備はいい?まずは重力魔法がどういう魔法なのかイメージしやすいように、一度使って見せるからね」
「わかった」
すると、ゼノは庭の隅にあった石を持ってきて充とゼノの間に置いた。
そして一度深呼吸をして目を閉じ、集中力を高める。その数秒後ゼノの周囲の魔力が高まっていく。そしてゼノが鍵言を唱える。
「グラビティ」
そう唱えた瞬間、石が地面にめりこみ、やがて割れてしまった。
「.....ふう、これが重力魔法の基礎の基礎の「グラビティ」よ。結構魔力消費量多いから疲れるのよね」
「それって威力調整とか出来ないのか?」
「今は石を砕くイメージでやったからこうなったのよ。もちろんもっと圧を高めることも出来るし、弱めることも可能よ」
「ならいいんだ。威力を調節できないと気軽に使えないからな」
「それもそうね.....じゃあつぎは充がやってみて。これが出来れば次のステップに行くわ」
「わかった。やってみる」
充はそう言うと石に視線を向け、魔力を練る。
「....グラビティ」
すると先程割れた石がさらに粉々になり、やがて砂のようにサラサラになった。
「もうちょい弱めでよかったのか....まぁこれから慣れていくか」
「凄いわね。想像を軽々とこ超えていくわね。じゃあさっき言ったとおり次の魔法ね」
「何て言う魔法なんだ?」
「アンチグラビティって言う魔法なの」
「アンチグラビティ?」
「とりあえず使ってみせるわね」
「たのむ」
「任せて!」
ゼノはそう言うと、新しい石を持ってきてさっきと同様、魔力を高めていく。
「アンチグラビティ」
ゼノがそう唱えた瞬間、石は結構なスピードで上に上がって行った。
「おーおー、凄いなどうやったら戻ってくるんだ?」
「魔力の供給を断てば自然の摂理に則り落ちてくるわ」
充はふと思ったことを口に出した。
「これって重力の方向変えてるだけだよな?鍵言を分ける必要はあるのか?」
「あら、そこに気づくなんてね。なかなかいい質問だわ。正直グラビティでもアンチグラビティと同じことが出来るわ。逆もまた然りね」
「そうなのか?じゃあなんで分けてあるんだ?」
「魔法に一番大事なものは?」
「魔法に一番.....?あぁ、なるほどな。つまりはイメージしやすいからか?」
「そういう事!要するに声に出すことによってそのイメージをより強くもつのよ。そうすることによって魔法を使いやすくしているの」
なるほど、確かにそう言われるとそうだ。何か行動と結びつけて記憶すると覚えやすくなるってどこかで聞いたことがある。
「ん?じゃあイメージできれば詠唱はいらないのか?」
「ん?ええ、つまりはそういう事よ」
なるほどじゃあこの重力魔法を利用すれば......
「......充、何を企んでるの?」
「えっ?なんでわかった?」
するとゼノは呆れた様子でこう言った。
「あなた結構顔に出るから気をつけなさい」
マジか、そんなに顔に出てただろうか。少し気をつけないとな......
「で?何を思いついたわけ?」
「もし俺が思い浮かべてることが出来るなら.....」
「出来るなら.....?」
「空を飛べる」
一瞬の沈黙が2人を包む。
「......どういう事?」
「要するにだな、まず上方向の重力で上に浮くだろ?そしてちょうどいい高さまで上がったら、行きたい方向に重力を発生させればいい」
「.....なるほどね、結構単純だけど今まで思いつかなかったわ」
するとゼノは、実際に自分にアンチグラビティをかけて、適当な高さまで上がると、横に水平移動を始めた。
「.....なんか不格好だな」
充はゼノを見てそう思った。
「まぁ、鳥みたいな滑らかな動きじゃなくてカクカク動いてる感じがするものね」
「まぁ、練習すれば結構いい動きができるようになると思うんだよ」
「まぁ最終的にはそういうことになるわね」
「じゃあここら辺で空を飛ぶ云々の話は一旦終わりにするか」
「そうね。じゃあこれが最後ね。グラビティプレスって言う魔法よ」
「それを聞くだけで何となくどういう魔法かわかるな」
「そうね。まぁ要するにさっきの2つの魔法を同時使用するだけね」
「じゃあこんな感じか?」
充は先程の石を地面にめり込ませることなく粉砕した。
「そんな感じね。ほんとに筋がいいわね」
「まぁ神様スペック超えてるからなぁ」
「.....とりあえず私が教えられるのはこんなところね」
「そっか、ありがとう」
「こちらこそミツルが面白い発想するから楽しかったわ」
「ミツルさん、ゼノさんお疲れ様です。お茶を入れてきたのでどうぞ」
そう言ってリンがお茶を持ってきてくれた。
「リン、ありがとう.....そろそろ昼時か」
充は今日の昼ごはんは何を食べようか考えるのだった。
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