第23話
「さぁて.....何を作ろうか」
俺は厨房を見渡してみる。あるのは引越し祝いとしてポルトさんに貰った野菜が何種類かと、昨日テル達が狩ったグリーンウルフの余剰分だ。
「シンプルに野菜のスープとステーキでいいか。葉野菜もあるからサラダも作ろう」
そして俺はぱぱっと準備し、あとは肉が焼けるのを待つだけになった。
「よし、子供たちにも食べさせられる量はあるな」
するとその時玄関のチャイムがなった。
「誰だ?まだこっちの世界の知り合いなんて少ないからテルとかルナの知り合いか?」
そして充は玄関の扉を開けた。
「はいはーい、どちら様でしょ...う.....か?」
扉を開けるとそこには金髪で綺麗な翡翠色の目をもち、さらにとがった耳を持つ女性、要するにエルフがいた。
「えーと.....私はエイル魔法学園の校長を務めさせて頂いてる、エリーナ・エスカローラと申します。先程大魔術を行使しませんでした?あれを発動したのは誰ですか?非常に興味深いです!!」
「と、とりあえず中へどうぞ」
充はこれまためんどくさそうなやつが来たなぁと思いつつも、家に招き入れる事にしたのだった。
社交辞令的な対応で家の中に入れてしまったが魔法学園?の校長が何の用だろうか。
1番可能性があるのはさっきの魔力を察知して来たって感じか?
充がここまで推測しているとエリーナが口を開いた。
「あの.....ひとつお聞きしてもよろしいですか?」
「はい、何でしょうか?」
「さっき魔法の大規模術式を起動してましたよね?」
「多分このカーペットに付与した時のものだと思うが.....」
「このカーペットに?一体どんな付与を?」
「テレポートって言う魔法だ。要するに転移まほ「てんいまほうですか!?」」
やたらと食い気味に来たな。転移魔法が珍しいのか?
「あなたは時空魔法の使い手なのですね!そして先程の術式.....その年齢にして高位の魔法使いとお見受けします!」
なるほど、エリーナは時空魔法を珍しがってるんだな。
「まぁそういうことだけど.....一旦落ち着こうか」
エリーナははっとして、こほんと咳払いをし話を続けた。
「すみません、魔法の事になるとどうも歯止めが効かなくなってしまって.....」
「いえ、気にしないでください」
しばらくの沈黙が流れる。
「あの.....その腕前を見込んでお願いがあります!」
「お願い.....ですか?」
「はい!出来れば子供たちに教鞭を取ってもらいたいと思いまして!」
充は少しめんどくさそうだと思いつつも話を聞くことにした。
「で?なんで俺なんだ?」
「あなたの使った魔法に実に興味があります!」
「はいはい、ありがとう。で、ほんとのところは?」
エリーナは頬をポリポリとかき、はにかんだ。
「あはは.....やっぱり分かっちゃいました?」
「まぁ何となく.....」
実は充はこの教師になって欲しいという言葉は4割魔法への興味、6割は何か別の理由があるのだろうとあたりをつけていたのである。
「実はですね.....この間時の女神ゼノス様の加護を持った教師が時空魔法の講義を行ってたのです」
「ん?時空魔法ってその加護ないと使えないから講義やる程でもないんじゃないか?」
「いえ、その加護があれば無理矢理適性属性になると言うだけなので、元々才能があれば使えないこともないんですよ」
「そうなのか」
「はい、では続けますね。で、講義を行ってたところ貴族出身の生徒が勝負を挑んで来たらしくて、その教師は時空魔法を教えるためだけにいるのでその勝負に負けてしまったのです。それで落ち込んだその教師は退職願を出してきてしまって、そのせいで今てんやわんやなのです」
「なんでその勝負を受けたんだよ.....」
「なんか貴族の特権でも使われたのでは?」
「ふーん......ルナ、そういうこと出来るの?」
「いえ、基本的に魔法学園は身分の違いは無視することになってるはずです」
「なるほど。で、俺に教師になってもらってその生徒を黙らせろと?」
「はい、いまそのクラスは教師に教わることなんざねぇ!とか言ってて手が付けられないんです」
「エリーナさんはそこそこ強いんだからエリーナさんが黙らせれば?」
「私は時空魔法使えないので私に負けたところで反省しないでしょう」
「なるほど......じゃあ受けるかなその『お願い』とやらを。ルールを破っているのはなんか気に食わないしな」
「ほんとですか!ありがとうございます!!」
こうして一区切りついた頃「ぐぅぅ〜」という可愛らしい音がした。
エリーナが顔を俯かせ真っ赤になっている。
「あはは.....ご飯食べて行きます?」
充がそう提案するとエリーナはガバッと顔を上げ
「いいんですか!?」
と勢いよく聞いてきた。
「お腹が空いてるようだしな」
こうしてエリーナも含めてテーブルを囲んだ。
早速テルが野菜スープを口にする。
「この野菜スープ美味しい!」
「お、テルわかってるな!子供達でも野菜を食べれるようにスープを煮込んだんだ。お前も食べれなきゃおかしいよな」
テルはそんな言葉が耳に入らないのか、子供達と並んでグリーンウルフの肉にかじりついた。
「確かに美味しいです.....しっかりと煮込んであって王城のものと比べても遜色無いですね」
どうやら皆の口にあったようだ。
「ミツルさんおかわりです!」
「お前は客なんだから少しは遠慮しろ」
「だってすごい美味しいんですもん!」
もうエリーナがお代わりするのはこれで5回目である。ちなみに皆でワインも飲んでいる。既に3本空になっている。
「エリーナさんは何属性の魔法が使えるんですか?」
人見知りのリンが珍しく話題を振った。
「ん、私ですか?私は基礎の6属性と水属性派生の氷属性なんかが使えますよ。1番氷属性が得意ですかね」
「そうなんですか!6属性扱えるってすごいですね.....」
「そんなことないよ?器用貧乏になっちゃうからどれか一つの属性の達人と戦ったりなんかしたら負けちゃうし」
「まぁ、使えることに意味があるんだろ」
充は自分に言い聞かせるようにそう言った。
「ちなみにミツルさんは何が使える感じですか?」
「俺は6属性と光属性派生雷属性と光属性派生時空魔法と......あと使ったことはないけど多分氷なんかも使える......と思う」
「へぇ.....多才なんですねぇ」
「お前が言うと嫌味にしか聞こえないが?」
「そうだ!じゃあミツルさん、私と勝負しましょ!」
「はぁ?なんで俺がお前と戦わなきゃいけないんだよ」
「そこはほら!えーと......採用試験.....そう!採用試験ですよ!」
「はいはい、で?本心は?」
「私と同じ器用貧乏の人と戦ってみたい!」
「おーけー。そのケンカ買ったじゃあハンデで俺は近接武器を使わないよ」
「おー?随分と舐め腐ってやがりますねぇ?」
「お前なんかに武器を使う価値もないからなぁ?」
どうやら2人とも酒が回ってきたようだ。
「あの.....二人共大丈夫?そろそろ休んだら?」
ゼノが仲介に入るが、もう手のつけようがない。
「なんも問題ない。大丈夫」
「わらしもらいじょーぶれふよぉ?」
「ミツルはともかく、エリーナさんはアウトですね......」
「何もアウトじゃないれふよぉ?.....すぴー......」
エリーナは可愛い寝息を立て、机に突っ伏して寝てしまった。
「寝たのか」
「騒がしい人ねぇ.....」
ゼノはそう言ってクスリと笑った。
「まぁ明日改めて勝負挑まれたら受けるかな。じゃあ俺も少し酔ったから先に休むわ。おやすみ」
「おやすみなさい」
そう言ってミツルは自室に戻って行った。
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