第13話
俺達は今西門から出て数分の所にいる。
「さて、ルナリア。俺はもうゴブリンの位置がわかってしまったんだが......どうする?」
「もうですか?それにどうやって.....」
「ルナリアちゃん、冒険者の手の内を探るのはあまりオススメしないよ。今回はミツルさんだったから良かったけど、それをとても嫌がる人もいるから」
「わっ、わかりました!」
(それが冒険者の常識なのか......覚えておこう)
充は、冒険者ランクこそ高いが、冒険者なりたてほやほやである。そこらへんはあまり詳しくない。
「で、どうする?せっかく初依頼なんだから自分で探して自分でやってみないか?」
「はいっ!そうします!」
「あのっ!私も手伝いますっ!」
「リンか、そうだな。ルナリア1人じゃ不安な部分もあるけどリンが付いていれば問題なさそうだな」
「じゃあ私とミツルで、私たちの分はさくっと倒しちゃいますか。どうせ人数分依頼受けたんでしょ?常駐依頼だったし」
「ん、よく分かったな今回は一人7匹、合計28匹討伐しないといけないんだ」
「私は前衛職の格好してるけどこれでもシーフのレベルカンストして気配察知やら色々出来るんだからね!」
ふと、そこで充は気になったことを聞いてみる。
「レベルカンストって普通どれ位かかるものなんだ?」
「んー私達はだいぶハイペースだったから2年位かな?」
俺はもう心の中で謝ることしかできなかった。
「ミツル様?なぜ謝ってるんですか?」
「はっ!すまん何でもないんだ」
どうやら心の中で謝っていたつもりが口から出ていたようだ。
「ねね!ミツルはどんな職業がでたの?」
「あぁ、俺は」
充はそのまま全てのジョブを教えようとしたが、思いとどまった。
(そういえば受付嬢のお姉さん凄い動揺してたよな.....)
「.....大賢者、シーフ、解呪士かな」
充は出して問題なさそうなシーフと、ないと今までの行いの説明がつかなそうな大賢者、解呪士を教えることにした。
「やっぱり大賢者だったんだ!それにお揃いのシーフまで!」
「さすがミツル様です!その解呪士のジョブのスキルで私の呪いを解いてくださったんですね!」
この2人は簡単に信じてくれた。だが、リンは違った。
「.......一ついいですか?」
「ん?なんだ?」
「私はてっきりそのローブから、魔導攻撃職の方なのかと.....あと体格もそこそこ良いし、そのローブの腰周りの膨らみ......剣を二つ差してますよね。双剣術士などのジョブもあるのかと.....」
(やっべぇぇぇ。リンの観察眼を甘く見すぎていたな......)
充はしばらく考えたがいい打開案が見つからず、
「.....仕方ない。本当は見せたくなかったけど俺のジョブ一覧だ」
そう言ってギルドカードのジョブ一覧を見せる。もちろんレベルは伏せて。
「.......リンの言った通り、双剣術士もあるし魔導攻撃職の魔術師や、ウォーロックもある」
「ミツルさん......」
充は怒られることを覚悟した。
「なんですか!この凄まじいジョブの量は!やばいですよ!」
(あるぇー?)
怒られるよりむしろ喜ばれているような。
「まぁ取りあえず、そんな所だそろそろギルドカードかえして.....」
充がそう言いかけた時、ルナリアが気になる言葉を放った。
「これだけ豊富なジョブがあるとジョブ連携も多種多様ですね」
「ジョブ.....連携.....?なんだそれ?」
「え!?知らないんですかミツルさん!」
「すまん知らない」
やっぱり俺は世間知らずのようだ。
「ジョブ連携を知らないとは.......ミツル様はもしかして世間知らずですか?」
口に手を当てニヤニヤしながらルナリアがからかってくる。
(異世界から来たんだから仕方ないよなぁ....)
そんな事を思ったが言えるはずも無く、
「あぁ、俺は田舎の農村出身だからな」
と誤魔化しておくことにした。
「で、ジョブ連携って何なんだ?」
「ジョブ連携ってねー!なんかこう....がっ!てやってうおおお!ってなるの!」
「あっはい。ジョブ連携とはですね、カンストしたジョブ同士、組み合わせられる事があるんです」
どうやらリンが説明してくれるらしい。テルは思いっきりスルーされた。
「へぇそんなシステムがねぇ」
「いまミツルさんのジョブで出来そうなのは....このウォーロックと双剣術士ですかね。ウォーロックっていうジョブは魔導攻撃職の1つなんですけど少し特殊で、魔術師の下位互換みたいに見られがちですが、実は性質が違いすぎるのでどちらも一長一短なんです」
「と言うと?」
「範囲魔法最強はもちろん魔術師です。マジシャンや、ウォーロックなんかとは比べ物になりません」
「ほうほう」
「ですが、近距離型魔法攻撃職の最強はウォーロックなんですよ。ウォーロックは自分の持っている武器に魔法を付与し、敵の弱点属性を剣に付与したりするんです」
「あぁなるほど。だから双剣術士とジョブ連携できるのか。双剣術士の剣二つに魔法を付与して戦うと.....なるほどなぁよく出来てる」
「ですが、実はウォーロックが下に見られる理由がもう一つありまして......さっき属性を付与すると言ったんですが、実は属性は確かに付与は出来るんですが効果がいまいちなんです」
「そうなのか!?」
充は属性値が売りなのでそれが効果がイマイチと言われると辛いものがある。
「はい。なんか効果出てるのかな?これ?程度な感じなんです。なので属性値は魔法の適正がどれだけ高いかみたいな程度でほとんど無意味なものなんですよ」
そこまで説明し終わると、充は近くに接近してきている魔物がいることに気づく。
「なにかとても早い魔物がこっちに接近してきている!気をつけろ!」
「「「はいっ!」」」
そして、全員が臨戦態勢になると、それは姿を現した。それは、ここにいてはいけない魔物。翼の蜥蜴のような見た目で、とても大きい20メートルほどあるのではないだろうか。
「あれは.....」
「ドラゴンですよ!にげなきゃ!食べられちゃいますぅぅ!!!」
テルがそう叫ぶ。
(鑑定!)
ーーーーーーーーーーー
ウインドドラゴン
レベル ・・・406
HP ・・・15,000/15,000
物攻・・・38,000
魔攻・・・24,000
魔力・・・24,000/24,000
防御力・・・6,000
俊敏・・・2,000
属性値
火・・・0
水・・・0
風・・・9,539
土・・・0
光・・・0
闇・・・0
スキル
突進
属性ブレス(風)
固有スキル
風ノ王
ーーーーーーーーーーー
(強いな.....だけど、属性値がほぼ無意味なものって言うのは少し間違いだな.....)
充はそのことを証明するためにこのドラゴンを倒すことに決めた。
充はまず3人から注意をそらすために、ドラゴンに飛びかかる。
そして、ドラゴンの首に剣を当てるが弾かれてしまう。
(!?このドラゴンの防御力はそこまで高くなかったはず!)
だが、充は注意を引くことに成功し、3人とは逆の方向に走る。
(こいつの防御力は成人男性の60倍程度......そんなんで今の攻撃を防げるのか?)
充は距離を保ちながら考える。そして一つの可能性にたどり着いた。
(鑑定!)
ーーーーーーーーーーーー
ウインドドラゴンの鱗
効果
防御力+5,000
風属性+7,000
ーーーーーーーーーーーー
(やっぱりか!)
そう、充はドラゴンの鱗の防御力が高いことに気づいた。さらに、充からしたら少ないと感じるかもしれないが、風属性+7000というのもだいぶ影響が出る。
そこで充は考えた。
(普通は鱗のない腹なんかを狙うんだろうけど......今回は属性値の効果を探るために鱗を貫通してみよう)
もちろん先程の双剣術士としての攻撃には、属性が乗っていない、つまり無属性物理攻撃だ。そして、次に充が繰り出そうとしているのは.....
(ジョブ連携!双剣術士・ウォーロック!)
そう念じると、体の奥から力が湧いてくるような気がした。そしてギルドカードを確認してみると、ジョブ欄にクルセイダーというジョブが追加されていた。
それを確認した充は、二つの剣を構え直し、
「よしっ!いくぞっ!火属性付与!」
そして充はドラゴンの首筋に刃を落とした。するとさっきは弾かれてしまった剣が、すんなり入っていき、ドラゴンの首を切り裂いた。
そして暫くもがいていたドラゴンだが、やがて動かなくなった。
「さて、3人はどこにいるかなっ.....といたいた」
「ミツル様!ご無事でしたか!」
「あぁ、問題ない」
「ミツルさんこれ一人で倒しちゃったんですか?」
「まぁそうだけど。あ、ドラゴンの素材って売れるの?」
「えぇ、売れますけど持ち運びが.....」
「それなら心配いらない。アイテムボックス!」
「「「え?」」」
「ん?」
充はまだ自分がとんでもない事をしていることに気づいていない。
「.....ミツル様、今何したんですか.....?」
「なにって、アイテムボックスっていう魔法で原理は分からんが物をしまえる」
「原理は分からんがじゃないわよ!?それずっと昔の時代にあったって言う空間魔法じゃ.....」
「そうなのか?何となく闇魔法で作ってるんだが....」
「それって....派生属性だから、属性値なんかはその元となる属性に依存するはずですが.....ミツルさんが闇属性でその魔法を使っているのであれば、空間魔法は闇属性から派生したものってことになります」
「じゃあミツル様はドラゴン丸々入れられるほど闇属性が高いってことですか?」
(やばいやばい、属性値高いのバレるかもぉぉ)
「まぁ空間魔法使える人がすくないからどれ位属性値あるのかは分からないですが.....」
何とかバレずに済んだようだ。
「よし。じゃあ元々の予定のゴブリン倒しに行くか」
「忘れてました!」
「元々ルナリアのための依頼なんだからな....」
そしてみんなで依頼を達成し、街に戻る。
「受付嬢さん。依頼達成報告とあとドラゴンの素材を.....」
「ドラゴン?ワイバーンかなんかですか?」
「いえ、ウインドドラゴンって奴なんですが....」
「ウインドドラゴン?って!西の森の主じゃないですか!?その死体ってまだ森にありますか!?」
「いえ、ここにあるんですが.....」
「ここ.....?どこですか......?」
「ここ」
そう言って俺はアイテムボックスからウインドドラゴンを取り出す。
「ちょっ!ミツル!何やってるんですか!さっきとても珍しい魔法だって言ったばっかりなのに!」
「いま.....どこか....ら.....?」
冒険者ギルドは一時騒然となった。
「え、だって空間魔法の使い手は少ないって言っても逆に考えれば少ないけどいるってことだろ?」
「そ、そうともいうんだけど違うの!」
テルがなにやら慌てているが前例があるなら問題ない気がするんだが。
「お、お、おぉぉぉ!!!!」
「おい!あんちゃん!お前この前超すげえ回復魔法使ってたよな!しかも空間魔法!なぁ!俺らのパーティーに入らねぇか!!?」
「はっ!?お前ずるいぞ!抜け駆けすんじゃねぇぇ!!」
なにやら充を取り合うと言う事態に陥った。
「ミツル!ドラゴン一回しまって!一旦ギルドから出るわよ!」
「あ、あぁ」
充はテルーナに言われた通り、ドラゴンをしまう。そしてその一瞬の隙にルナリアがやらかした。
「ミ、ミツル様は......私のものですぅぅぅ!!」
「はっ!?ルナリアっ!?何言ってんの!?」
充はそう言ってすぐに気づいた。ルナリアの名前は暫くは秘密にしておこうと思っていた充だったが、充がルナリアの名前を呼んだことによりそれは不可能になった。
「お、おい。今ルナリアって言わなかったか?」
「ルナリアって、国王の一人娘じゃ無いのか?それにミツル『様』って......」
「何であんたたちはギルドで問題を起こしたがるのよぉぉぉ!!!」
テルーナが限界に達したようだ。
それから一旦皆共通の宿屋に戻り、充の部屋に集まることになった。
「で......ミツル。ルナリアさん。何か言いたいことはある?」
充とルナリアは床に正座させられている。
充はスッとまっすぐ手を挙げた。
「はい。ミツル」
「はい。俺は空間魔法を使ったことは反省してますが後悔はしてません!」
「そこは後悔もしときなさい!」
次にルナリアが手を挙げる。
「はい。ルナリアさん」
「はい。ミツル様は本当に私だけのものなのであの発言は仕方なかったと思います!」
「あなたは一国の王女様なのよ!?何でこんなお気楽なの!?」
この説教は夕飯の時間まで続いた。充とルナリアは反省して無かったが.....
ーーーーーーーーーーーーーーー
とある部屋の扉がノックされ一人の男が入ってくる。
「ボス!あいつを見つけましたぜ!!」
そう話すのは前ティナを攫おうとして充に阻止された奴の1人である。
「ん?あぁお前か本当に弱みを握って来たんだろうな?」
ボスと呼ばれたその人物は少しの威圧を放ちつつ、その男を睨む。
「は、はい。あいつ冒険者ギルドに登録してて、同じ冒険者の女3人と一緒に活動してるみたいなんです!」
「それで?」
「その男はえげつない強さを持っていますがその他の女3人は大したことなかったんです!なのでその女3人を攫って脅せば姿を現しますよ!」
「......」
「作戦を立てるのは自分に任せていただければ完璧に仕上げて見せますよ!」
「なら、やれ」
「はっ!」
そう言って男はその部屋から出ていく。
これが犯罪ギルド『餓狼の遠吠え』の最悪の結果を招くとは知らずに.......
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