実里side
「ねぇ…ねぇ…」
私が声をかければ。
「なんだよ、ウザいな」
酷い言葉が返ってくる。
「用が無いのなら、俺行くけど」
怪訝そう…嫌そうな顔をして私を見てくる彼。
今居る場所は、生徒の往来もある廊下。
王子でもある彼を引き留めれば、嫌でも注目を浴びる。
「…う、うん。何でもない。ごめん、引き留めて…」
萎縮して、そう答えるしかできなかった。
彼は、そのまま歩き出した。
こっちを振り返ることもなく、私はその背中を見送った。
はぁー。
教室に戻り、溜め息一つ吐く。
「どうしたの?実里」
心配そうにそう聞いてきたのは、親友の愛羅。
唯一彼と付き合ってる(?)事を知ってる人物。
「ん?どうもしないよ」
笑顔を張り付けて言う。
「また、そんな作り笑いなんかして…。どうせ王子の事でしょ?」
呆れ顔で聞いてくる。
「…私たちって、付き合ってるのかなぁ…」
つい、本音がポロってこぼれでた。
「う~ん。付き合ってるとは言えないよね。はたから見たらね」
愛羅が、可愛い顔を歪めて言う。
「だよね。もう、このまま関わらずに、自然消滅になってしまった方がいいか…」
口にしたら、なんかどうでも良くなってきちゃった。
「うん。王子の事は、さっさと忘れて、次の恋しなよ。実里は、可愛いんだからさ。きっと他にいい人居るって」
ニッコリと笑う愛羅。
「…ってことで、合コンに行こうか。調度人数足りてなくてさ」
愛羅が、私の腕を引っ張った。
了承する前に行くことになった。
気持ちを切り替えるためにも楽しもうと思った。
愛羅に連れられて来た場所は、駅前にあるカラオケボックス。
そこの入り口に何人か知ってる顔を見つけたのか、愛羅が。
「遅くなって、ごめん」
って、声をかけてた。
「いいよ。揃ったところで入ろ」
私たちが、最後だったらしい。
そのまま、中に入って受付をし、部屋に移動した。
少し広めの部屋に入って、思い思いの場所に座り、自己紹介をして、歌い出した。
「ねぇねぇ。君、王子の彼女でしょ?こんなところに来て大丈夫なの?」
茶髪で、ピアスをジャラジャラ着けて、いかにも遊んでますって感じの男子が声をかけてきた。
何で、王子との事知ってるんだろう?
「大丈夫ですよ。って言うか、彼女じゃないですよ」
苦笑いを浮かべてそう答えた。
「彼女なら、ほったらかしにしないでしょ?」
彼は、私が何しようが気にしないでしょ。
放課後を一緒に過ごしたこともないけどね。
「そりゃそうだ」
そう言って、彼はケラケラと笑い出した。
何が、おかしかったんだろう?
私が首を傾げていたら。
「ゴメンゴメン。じゃあ、俺が迫っても構わないってことだ」
突然真顔でそんな事を言い出す。
えっ…。
「王子と付き合ってないんでしょ。だったら、俺と付き合わないか?」
私の顔を覗き込んで、そう言ってきた。
ちょ、顔が近いって…。
「友達からって言うなら…」
私は、そう言葉を発していた。
無下に断れなかった。それに、彼なら王子の事知ってるみたいだったから、何か聞けるかもって、打算もあった。
「ん。それでもいいよ。じゃあ、ケー番交換しよ」
軽く言われたけど、私は了解して、その場で交換した。
「ありがとう、実里」
って、満面の笑顔でお礼を言われて、ドキッて心臓が跳ねた。
そう、王子には感じなかった想いが、彼にはあったのだ。遊んでそうに見えたけど、話してるうちに違うのかなって思えてきた。
その後も、私は、彼と楽しい時間を過ごした。




