カイくんは語りたい
お、用事終わったか? 終わらなかったら俺の前にいねぇか、そりゃそうだ。
ああ、背中の奴が探してた人だ。この町に居るとは……って、まあそうか。知り合いってのは言ってたもんな。気になるか。
よかろう、せっかくだから語っちゃおうか。
気取るなキモい? あァそうかい。
まあ語るが? 俺にとって、浅葱優という人間はあまり関わらないタイプの人間だったんだよ。
こいつの名前な? アサギって名乗ってるみたいだし、呼ぶならその方が良いんじゃね?
目つきが悪い、素行が悪い、態度も悪い。そんな人間だっつー自覚はあった。だいたい俺はあの頃常に虫の居所が悪かった。
浅葱優とは高校一年の時、同じクラスだった。コイツとはどっちから話しかけたか覚えていないが、喧嘩になったんだ。
あの頃も女みたいな容姿して、実際気持ち悪かった。いや、やけに似合っていたが、男が理由もなく髪伸ばしていて。化粧はしていなかったけれど男装女子と言われても通じてしまいそうだった。
そんなコイツに、俺は「女みてェで気持ち悪ィ」みたいな事を言ったんじゃなかったか。
そしたらブチ切れてさ? 屋上で殴り合いになったんだ。笑えるだろ?
おう、殴り合い。そんな事するような奴じゃないと思ったんだけどな、頭に血が上ってるのはっきり分かるくらいに顔真っ赤にしてさ。
で、どうなったと思う?
いや、そんな目ェキラキラさせて「勝ったんだよね?」って言われてもな。普通に負けたよ、コイツ慣れてない癖に思い切りが良くてな……。
はぁ、これ、よく考えたら黒歴史じゃねえか? 止めだ止め、もう止めるわ語るの。
うるさいうるさい……ああ分かった、一応それが原因でかは分からんが、ちょくちょく話すようにはなったさ。
色々遊んだしな、思い直してみれば泣く要素無くねぇかな……俺……。
目を覚ました。
「あ、カイくん、アサギくん目を覚ましたよ?」
「おぉ、そうかじゃあ」
落下して、尻餅をついた。僕はどうやら背負われていたようで、カイは僕が目覚めたと見るやいなや振り落としたのだ。
「痛いなぁ! 何してくれるのさ!」
「いや、時間もったいねぇしティアに追い出されてたし、仕方ねえだろ」
「今の説明じゃ何もわかんないよ!?」
「ティア怖くなったよな。気絶した野郎を雨晒しにしとくとか、殺す気か」
「ああ分かったけど落とす理由にはならないよね!!」
雨の中放置される僕。ティアさんが居た孤児院の中に入れてもらえないのなら他を当たるしかない。だからその宛てに向かって僕を背負って移動していたんだろう。
「あ? そんなの疲れたからに決まってんだろ」
「酷い」
「ふざけんな、人間ってかなり重いんだぞ、米50キロより重いんだぞ」
「当たり前だってそれは。……別にこっから背負ってけー、なんて言わないし文句も少ししかないから良いけど、さ」
僕は立ち上がって、カイの隣に立つ少女を見る。
「この子、誰」
「私? 私はカイくんの彼女!!」
………僕はそう言って持っていた傘をくるくる回しながら胸を張る少女を眺める。うん。
「………ロリコン」
「ちげぇよ!!?」
カイはずっと持っていた傘で襲いかかってきた────




