無頓着に無関心に
気にするタイミングが遅いが、5月に失踪したカイが、7月に異世界へ来た僕より年を取っていることには違和感を覚えるが、きっとそこらへんは誰に聞いても分からないだろう。時間の流れ方が違うとか、そう言った感じであろう。
「ったく、雨だってのに長い時間傘も持たずに外居るもんじゃねぇな……」
そう言ったカイは不思議と雨に濡れていない。
女性二人は奥に行ってしまっていた。着替えたりしてくるのだろう。
ああ寒い………ちょっと濡れすぎたかなぁ。
「………二人とも話すならこの中ですれば濡れなかったと思うんだが……ってカイさん濡れてないけど」
奥から声だけが聞こえる。
「当たり前だろ」
カイは自慢げだ。いや、何が当たり前なの? 外で話すこと? 雨に濡れていないこと?
どっちも当たり前じゃないと思うんだけど……。あと多分雨に濡れていないことだろうな……。
「つか、いつもカイさんのこと付きまとってるエルフの子、なんでいないの?」
「ちょっと教会におつかいに、な」
「連れがいたの?」
そう聞くと頭を掻きながらカイは答えた。
「……居たら悪いかよ」
「全然。でも、不思議だと思った。ほら、カイって周りをいつも寄せ付けない雰囲気あったから」
「……そうか? 言われてみれば………あー……えっと……クラスの奴ら、滅多に近寄ってこなかった………ような……そうでないような……」
「どっちだ……」
リエルさんが呆れていた。リエルさんはカイの身の上話なんて殆ど聞いたこと無いのか、反応したところを見て、興味有ることを隠せてない。
「近寄ってくの、濁斗か僕か、あと女子に1人居た位じゃないかなぁ……と言うか思い出すのにどれだけ掛かってるの」
「しゃぁねえだろ? こっちからすれば百年も昔のことだ。一世紀だぞ? 世界が変わるレベルだ。それにまあ、人間どうでも良いことは思い出せないだろ」
「学校生活ぶった斬るなぁ……」
「ま、覚えてることはたくさんあるがな」
遠い目をしてため息を吐く。
「お姉さま? 何故そんな奴を家に入れたんですか? 馬鹿なんですか?」
「どうしてそう、ティアはこいつのこ……と………」
リエルさんは奥から出てきたであろうティアさんを見て、絶句した。
その位置は僕の背後なので見えない。
「バカティア! 服着ろ!! 服!!」
「「!?」」
その言葉でティアさんが今どういう状態なのか考え───る前に振り返っ
「見るなぁぁぁあ!!」
「がっ!?」「ちょっ!?」
僕ら二人を、どこから出したかわからない大鎌で凪ぎ、吹き飛ばす。
勢い強く、壁をぶち抜きゴロゴロと外を転がる。
泥が跳ねて口に入る。雨のせいでよく滑る。
やば、死ねる。
勢い凄まじく、僕はそのまま頭を強打した。
「泥だらけで居座られては困るからと、急いで来たらお姉さまがすぐやってくれました。良かったです、お姉さま汚れてはいませんよね?」
「せめて下着位着ようよ、他人様の前ではさ?」
「裸なんて見られても減るものではありませんよ」
「色々ダメでしょ!」
主にその汚れ無き白い肌とか見せられたら色々心配になる。野郎二人居たし。そんな所にこんな天使放置できない!!
「………?」
全裸ダメ! 警戒しよう! ね!?
「何で首傾げるの! 早く着替えて! 汚れてないからさ!!」
「そうですか? ………なら」
大人しく引き下がってくれたか。ティアが奥に行ったことを確認して安堵の息を吐いた。
「全く、無関心というのは大いに困る」
ちらりと、先程ぶち抜いた壁を見ると気絶したアサギを引きずってくるカイさんの姿が遠目に見えた。




