非情な死神
大男は気合いの一声と共に拳を突き出す。
「ぬんっ!!」
その拳は音速を超えた。かも。
「何これ!?」
大きい衝撃が、ちょうど僕の横1m位を駆け抜ける。
それは、僕の魔力の層を貫通出来るだろうと言うことを証明した。
「我が拳は神速。その一撃は無限に届く」
神速とはさすがに過大評価だと思うが、確かに僕のところまでは届いている。
後ろではリエルさんが気楽そうな顔して、そんな攻略の仕方があったのか……。とか何とか言っていた。
「さて、負けを認めれば出来るだけ苦しまずに殺してやろう」
「殺すのは既定路線なのね……」
大男は肩を竦め呆れたように言う。
「見られたからにはどちらかが死ぬまで殴り合うのは道理だろう?」
道理じゃない。
だが、暗殺を生業としているであろう彼等にとって素性バレはいけないのだろう。いや、だったら少しゃ顔隠せや、とも言いたいところだが。
「ん……? この男の動き…」
「リエルさん? どうしたんですか?」
後ろを向かずに僕は聞いたが、反応は返ってこなかった。
「認めぬのなら、掛かってくるがいい」
「いや、僕。積極的にあなた達と戦いたいとは言っとらんのですよ」
「掛かってくるがよい。」
「いや、だから……」
「先手を譲ると言っておるのだ!!」
「嫌だ!」
瞬間爆ぜ、吹き飛ぶ大男。
「詐欺師さん? これは新手の陽動ですか?」
弾き飛ばしたのはティアさんだった。
数メートル先で柔らかく着地した大男の姿が見える。
「…………どっちの動きも見えなかったんですけど……」
アレの相手するところだったの? と思うと少しばかり足が震える。
するといつの間にか隣まで歩いてきたリエルさんが僕の肩に手をポンと置いて、そのまま前へと歩いていく。
「おい! ティア!! ティアには無理だ! 下がってくれ!! 逃げるぞ!!」
「おや……? 居たのか貴様……!!」
「お姉さまがそう言うなら!」
必死さの滲む声で叫ぶリエルさん。対して大男は少しばかり眉をつり上げ、姿勢を低くし構える。
ティアさんは何の疑問も持たずに、襲撃者に背を向けて全力でこちらに走ってくる。
襲撃者。特に大男はティアさんの思考時間皆無の判断に驚いたようで、その背中を攻撃することはなかった。
「逃げる背中を攻撃するのは……武人としての恥である」
「気を失っただけだよね」
「しかし貴様は逃げないとはな」
「あっ」
……しまった。逃げ損ねた。
「アサギ! 必ず生きて帰れよ!」
リエルさんまで逃げてる……。
「殿を自らつとめるとは。流石である」
僕は遂に大男に背を向ける。
「ちっくしょおおおおおおおおおおおう!!!」
そして《魔力海》をその場に残し、全力で駆け出した。
やば、MP殆ど無くなった……!!




