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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 三章 強烈姉妹と幽霊それから勇者
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囲む襲撃者達1



 僕は孤児院出て来た後薄ーく、雨の落下を鈍らせないほど薄く魔力の展開をしていた。


 それは一帯を覆い尽くす程に広く薄く。


 そんな状態に気付かず襲撃者は、攻撃の意志を持って動いた。


 分かるだろう。これからどうなるか。



 一瞬で目視可能だった全ての襲撃者は僕の魔力の塊に締め落とされた。



 一斉に崩れ落ちる襲撃者達。


 さすがにこの状況で隠れている奴が居たりしたら討ち漏らししているだろうが、大体はこれで気絶しただろう。


 魔力は手足を操るほどに簡単に操れる訳じゃない。そもそも僕は特筆するほどうまくはないのだ。魔力適性で分かる。寧ろ下手すぎるくらいなのかもしれない。


 大量の魔力に物言わせて首の高さ辺りだけに魔力を寄せたのだ。集中は左手を水平に振るってやってみたのだ。下手したら死んでる奴もいるかもしれない。


 適性高ければ、魔力の範囲になにが居るとか分かったのかな…?


 強過ぎて死んでたりしてないか心配である。何分微調整は出来かねるのだ。


「げぼっ…なにしやがった」


 ……そこらでむせる声がする。場所が狂ったか、単純に弱かったか、かなー……はあ。


 内心上手く出来たと思った故にややショックだった。


「今のは全力のほんの一部です。死にたくなければ引き下がって下さい」


 出来るだけ表情を作らずに述べる。それに調整ミスっただけなので実際全力じゃない。だから嘘じゃない。


 勿論、一手で気絶させるつもりだったのであるから。こんな事言うつもりなかった。


 というか、動かないで待ってるけど、どんどん雨強くなってきてるなぁ。


「へっ、このくらいでビビってたらやってられっかよ」


 僕の発言に対しての思いが表に現れてしまったのか。それとも単に話を聞く気が無いのか。一人二人と、立ち上がってくる。


「……もしくは曲解したか。脳天気な頭だよねぇ……」


 僕は冷めた目で立ち上がってくる人達を眺めて呟く。中には気絶している人、立ち上がれなくなった人も居るようだが、集団の大部分は未だ動けるようであった。


 僕は左手に持っていた剣を……剣?


「…………また突然なんでこの剣現れたんだ……?」


 兎に角、先程投げっぱなしだったはずの半透明な十字架型剣を右手に持ち替えて構える。


「まあ、いいか。何でも」


 ひとまず、突撃してきた奴らを叩き斬ることだけに集中しよう。


「ぐげっ」


 先頭を走っていた人が不格好な姿勢で静止する。


 後から続く人も、同じように。しかし玉突き状にぶつかっている。


 丁度戦闘する気で魔力を展開した外縁部分で止まる様子を見て、僕は漸く気付いた。


「あー、そうか。そう言うことなのかー……」


 まさか〈戦場の死神〉相手にしたとき以降大して意味もないのでは、と思って止めていたのだが。


 漸くここに至って気付いた。


────これ、力押しで動けた〈戦場の死神〉が異常だったのか。


 実際あの一件以降薄く広く展開していたので、この事に気付くのが遅れていたのだ。


 自らのMPの異常さは知っていたが、理解が及んでいなかった。そう言うことだったのだ。


「そう考えると便利だね、これは。名前付けようかな」


 近付けないことを理解した襲撃者達は少し下がって何やら相談している。


 今のタイミングで攻撃されるとか、考えないのかな? 隙晒しすぎだと思うんだけど。


「って、それはいいや。別に大丈夫でしょ……多分」


 相談はすぐに終わったようで奴ら、僕を見て弓を構えた。ナイフを構えた。手のひらを向けた。


 手のひらは……魔法でも仕掛けてくるのかな?


「名前……そう言えば、リエルさんは『水中に居るみたい』とか言ってたような、そうでなかったような……」


 雨粒がゆっくり落ちてくるの、わりかし邪魔だなぁ……。


 一カ所に集めとこうかな。


「何ごちゃごちゃ言ってやがる!! 今! やっちまえ!!」


 そう言うと、まずは弓を構えた者が矢を放ち。続いてナイフを投げ。最後に詠唱を終えた者共が氷をぶつけてくる。


 雨だし、炎は遠慮したんだろう。氷は貫通力を求めて円錐形で、横回転していた。


「《魔力海(まりょくかい)》ってのでどうだろうか。それと……」


「んなっ!?」


 襲撃者達から、ちらほら驚きの声が挙がる。一部絶句したように口をぱくぱくさせる者すら居るようだ。


 僕はそちらをちらりと見る。


 視界の邪魔。そうとしか思えない程のおびただしい数の氷柱、矢、ナイフ。


 推進力を失って《魔力海》に突き刺さったそれらはただ地面に落ちる事すら出来ず。


「……これは《魔力砲・雨水(うすい)》とでも名付けようかなーっ!!」


 一塊に集めた雨水を、適当な感じで圧縮して襲撃者の方に近付ける。


 水鉄砲みたいな感じにするのも良いが、手元──手元でやってないが手元──が狂って自爆しても笑えない。


 襲撃者達は己がした攻撃が通用しなかったことで動揺しているのか、それとも単に水の塊がふよふよと近付いていることがさして重要だと感じていないかのように一切これといった動きをしていない。


「潰れて爆ぜて」


 僕はそう呟くと同時、水の塊を魔力で握り潰した。


 加減を考えずに本気で潰した。


 しかしそこは魔力適性E。動きが遅い。魔力にムラがある。おまけに魔力の層が厚い。


「ぐはっ!?」


 一方向に霧のように噴射されたそれは、それはそれで一部の襲撃者にダメージを与えたけれど。


「なんだこのしょぼい攻撃は!」


 その損害はしょぼかった。


「分かってるから言わなくていいわ!!」


 正直今日一番傷付いた。

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