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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 三章 強烈姉妹と幽霊それから勇者
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怪しげな人物は大抵危険



 取り敢えず僕は道なりに歩いていく。


 どうも市場と言ってた場所がこの先にありそうだ。いや、分からないけども。


「…………ん?」


 視線の先に黒い布で頭をぐるぐる巻きにしている上にかなり挙動不審な人物。


 かろうじて目のところは隙間になってるのか、歩くことは出来ている。


 この人混みの中でも、おかしなことに誰の目にも留まらず、そして当たらず。


 ……うっわぁ……すごく気になる……。


 右左を無闇矢鱈に見て、路地裏に消えていく。


 どうしよう、後を付けてみようかな。別にエリシアさんを追いかけるのだってやることがなくて勝手にやっていることだし。


「……よし」


 僕は、追いかけることに決めた。




 路地裏に入ると、少しだけ気分が悪くなった。


 しかし、先に入った人に多少の好奇心を持っていた僕は、それを無視して深くへと入っていく。


 すれば、異臭。悪臭。


 オルカリエの裏路地と違ってここは非常に汚かった。地面は所々黒く染まり、腐った何かや謎な骨、他にも汚物が放置されていたり。掃除が出来ていない、と言うよりはそもそも人の手が入っていないのであろう。


 無気力に地べたに座り込んで俯いている人の横を通り抜け、鼠共が集っている謎の肉を見ないように早足に駆けたり。


 そうする内に、ある意味予想通りのことが起こる。


 予想よりも裏路地は広く、ややこしい。


 奥に行くほどに、悪臭は濃くなる。所々、生きているのか死んでいるのかわからない人達が転がっている。


 こんな、こんな所があるだなんて……。


 そんな風に軽度の吐き気を堪えながらあの人を見失った。引き返そうにも道を忘れた。


「うわぁ、この世界来てから何度目……?」


 迷子である。紛れもなく。


「ってもまあ、まだ明るいし?」


 しかし非常に厚い雲が空を覆い尽くし、淀んだ色のみが見えるそれでは、大まかにしか時間が分からないだろう。


 感覚的には昼間だろうが、何気に暗い。


「まあ、大丈夫、たぶん、きっと」


 精神的には大丈夫じゃない。言葉はそう言っても声は誤魔化せない。自分から見ても震えていた。周りを見て、心が折れそうだった。


 しかし無理やって、無理にでも歩いていると遂に黒布を顔に巻いた人物を見つけた。



 その人は僕を真っ直ぐ見ていた。


 頭に巻いた黒布を解き首に掛ける。


 それだけで、ぼんやりとしていた人物の輪郭がはっきりとする。存在感が有るというか、先ほどまであれほど認識し辛かったのに、今ははっきりしている。


「なんだ。誰かが後をつけてきていると思ったら貴公か」


「え……〈戦場の死神〉……!?」


 嘘ぅ……何で?


「何故、という顔をしているが、寧ろ私がその顔をしたいが」


 そう言うので、僕は何故後をつけたかを言った。


「……挙動不審だったんで、つい」


「その程度で」


「誰も視向きしない挙動不審の人物なんて居たら気になるに決まってるじゃないですか」


「ぅぐっ!?」


 凄まじく動揺する〈戦場の死神〉。まさか挙動不審じゃなかったとでも?


「……と言うか何故見えていた? 気配は完全に消していたというのに」


 そう言うが、その点については首を傾げるしかない。僕は〈戦場の死神〉が気配消していた、と言うことに納得半分驚き半分なのだ。


 Sランクの冒険者が気配を消したというのに何故見つけられたのか。


 まあ、偶然だろうと考えるのをやめた。


「まあいい」


「何が……です……か?」


 相手から漂う、ただならぬ気配に背筋が凍える思いがして後退りする。


 〈戦場の死神〉は腰につけていた武器を右手で引き抜いた。それを特に構えるのでもない。


 対する僕は、武器を────


「あのー……何で武器を構えるんですか?」


「見つかったのがここで良かった。多少痛めつけても、問題ないんだからな」


「良くないですよ!?」


「私にも事情があるのだ。お忍びだというのに、報告されてはたまらん」


「すごい身勝手ですね……つまり僕が黙っていれば問題ないですよね?」


「あと余談ではあるが。もう一度」


 〈戦場の死神〉はそう言うと、腰を落とし、武器の切っ先を地面すれすれになるように構えた。


 うわ!? この人、殺る気だ!?


 僕に武器は無い。持ってきていないのだから有るはず無い。


 しかし、そんな事を気にする事も無いどころか。


「手を合わせてみたかったのだ! 一段と強くなったようだからな!!」


 嬉々として距離を詰めてきたのだ。

 作者氏の妹がチョコレートを作ってました。本人は友チョコと言ってましたけど、やっぱり貰ったらお返しをしないとなんて考えさせられるようなこのバレンタインの風習はやはり間違っている。けど、クラス全員に配ってくれる女の人がいたりすると、それはそれでいいかなと思ってしまうよね。チョコレートは美味しいですしね

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