知らないことで傷をつくる
僕は段々と痛くなってきた首の小さな掠り傷を押さえながら歩いていた。
「首何で切れてたんだろう……」
無意識のうちに怪我するほどボケてはいないつもりなんだけど、本当に覚えてない。
まあ、気にしたって傷がどうなるわけもない。この傷については無視しよう。
しかし、その後も僕は手で傷を押さえ続けていたのだった。
一方その頃、商店街の一角で。
「何するんですっ!? 狙いが狂ったでしょ!?」
「ふざけんな!! 何処狙って何しようとしてやがった!!」
「勇者らしく愚者狩りですが何ですか!? 何でじゃまするんですか!!」
「この街にはもう無理にしとめるべき愚者は居ないん────」
「います! アレですよ!」
指を指した先では人混みが。
熱くなった女──黒河麻華は手元に白く光を放つ紙切れを人差し指と中指の間に挟んで、その指で人混みを指したのだ。
対する男──エル(以下略)はその指から先程のようにその紙切れが飛んでいかないか気が気でなかった。
「視えたんですよ! アレを生かしておいてこそ大変なことになるんです!」
「見えたァ? 何がだよ」
エルは彼女がとても不安定であるように感じていた。
時間が経つほどに、その度合いが増しているように感じていた。
「……滅びの……未来ですよ」
「未来だァ? お前は紙片の勇者って話じゃねえか? なのになんだ。冗談とか言うならもっとマシな冗談を言えよ」
「…………っ!!」
怒ったな────とエルが目を細める。
黒河麻華は紙切れを無数に空間に出現させて。
「強そうに見えなくもないが、慣れてねえだろ? 動かすことすら出来てねえ」
「くぅっ……」
その発言で結局今操れる最低限の一枚────指に挟んでいた一枚の紙切れを残して全てを消してしまった。
「大体、勇者の干渉で直接人を殺すことは出来ないが、間接的には普通に殺せるんだぜ? そこんところ気をつけろよ。無駄に使うな」
「無駄に、使わなければいいんですよね」
「そうだが。この街で力を振るうことが無駄だって言ってるんだぜ?」
「…………」
いや、ちょ、睨むな睨むな…。
俺としちゃ、仲悪くやっていきたい訳じゃ無いんだが、こうも訳わかんねえ奴とじゃなぁ……。
考えている内にも黒河麻華は先ほど狙った愚者の後をつけようとしている。
出来れば何の行動も起こして欲しくはないんだが。
「……そうだ、クロカワ マカ」
「……何?」
不機嫌ながらに振り向く黒河麻華。
────そして俺は今の彼女にとって最悪で、後々の関係を考えて悪くはないが、結局のところ良くない事を言ったわけだ。
「趣味、占いって言ったよな? 占ってくれね?」
まあ、悪いとはこのとき思うことすら出来はしなかったが。
そういえばバレンタインなんて言いますが本命チョコレートをもらった経験がある人ってどれくらい居るんでしょうかね……。廃れてない? おかしいよね、廃れてるから作者氏にチョコレートが来ないんだよね。ああ、いまのおかしいっていうのはお菓子とおかしいをかけた高度な───
 




