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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 三章 強烈姉妹と幽霊それから勇者
80/190

忘れがちだが見た目はほぼ女

ハッピーバレンタ───じゃあ無いよ、なんだよ! お空の特殊イベント、どこもハッピーじゃないじゃないか! と毎年憤慨している作者です。いやまあ、お声聞けてハッピーには、なれるんですけれど。


 目覚めたら、部屋が明るい。いつもよりも遅く目覚めたせいで、そう感じるのかもしれない。


 と言っても曇り空。明るさで言えば明るくない方だろう。……ちょっと雨降りそうだと思えるくらいに雲はよどんでいた。


「あんまり良い目覚めじゃ、無いよね」


 すでに部屋には僕しか居なかった。


「エリシアさんは、買い物に言ったのかな……寝過ぎたかな」



 買い出しに行ったのだろうと判断した僕は暇なので部屋を出るつもりだ。エリシアさんは鍵を……持って行っているみたいだ。


 一応、合い鍵はある。


 家に籠もるのも悪くはないが、体にも悪いし、あまりやることもない。


 着替えて、僕は街に繰り出した。




 と言っても、あまり気分は上がらないな。


「先週のおかげである程度なら道はわかるけども」


 何を見ようか。


 街をのんびり歩きながら考えていたら、見覚えのある後ろ姿が見えた。


「フーデラさん、とギーツさん」


「ん? なんだ、アサギか」

「エリシアと一緒に買い出し行った訳じゃなかったのかにゃ」


「……起きたらもう居ませんでしたよ」


 あぁ、やっぱり買い出しだったのか。


「エリシアの奴『アサギくん起こそうとしても起きなかったので一人で行ってきます』とか怒り気味に出発してたぞ」


「う、マジですか?」


「大マジだ」


 うわぁ……起こされて起きなかったのか僕は。


「にしてもエリシア出発してからあまり時間は経ってないぞ」


 ギーツさんはそれだけ言った。


 彼は僕に背を向けて歩き出した。


 補足するようにフーデラさんが言う。


「追いかけるなら今の内にってことにゃ……。きっと市場の方にいる……」


 彼女は寝ぼけ眼を擦りながらギーツさんについて行った。


 そう言えば何時も眠そうなのに、フーデラさんはよく外に出るなぁ。何でですかね。


「……ありがとうございます」


────聞こえないだろうけれども、教えてくれた礼を言わないわけにはいかなかった。


「市場かー……確か……」




「…………あれ?」


 結局のところ人が多い方へと行っていたら、商店街に来てしまっていた。


 あらら? 迷った?


 一応、ここが何処かは分かるので問題ないが。


「市場って言ってたけど、商店街とどう違うんだろうか……」


 多分気にする必要ないだろうが。


「多分、向こうが海だし」


 市場って言うと僕なんかは真っ先に魚市場が出てくるのだが。その発想から港の方へと行こうと思ったのだ。


 が。



────ヒュッ!


「?」


 何だろう、今の風は。


「っ!?」


 ズザザッ! と思い切り転んだ少年が目に留まる。


 人混みもそれほど無いし、地面も大して躓くところは無いというのにその少年は思い切り転んでいた。


「大丈夫?」


 僕はその転んだ少年に話し掛ける。手を差し伸べて、立つ手伝いを。


「だだだ大丈夫っ! それよりもお姉さんの方が大丈夫ですか!?」


「?」


 僕の顔を見るなり真っ赤になったり、真っ青になったりした少年を怪訝に思う。


 少年の目は僕の顔辺りの一点をまじまじと見ていた。


「首、切れてます……けど」


「えあ!? 嘘!?」


 首を手で触って確認すると確かに血が滲んでいた。


 え、何で、切れてる……?


 余りに小さい掠り傷ではあるものの、首から出血しているということは多少ではない動揺を誘った。でも、よく見つけたなこの少年。そして、僕は女じゃないんだけど?


「だ、大丈夫。多分この程度なら」


 しかし明らかに年下の少年を心配して声を掛けたのに心配されるというのはどうも忍びない。


 平然を装い、言葉を返した。


「大丈夫なの?」


「あー、大丈夫って言ったら大丈夫です! 君は取り敢えずその傷消毒でもして、絆創膏でも貼っておきなさい! それじゃ!」


 ちょっとしたアドバイスだ。何もせず話しかけるだけして退散というのは、年上としても、人としてもどうかと思うからね。


 僕は、早足でその場から逃げるように去っていった。


「ショウドク? バンソーコー? 何それ」


 対する少年は、心配して声を掛けてきてくれた(おねえさん)が謎の言葉を残して去った事で首を傾げていた、らしい。

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