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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 三章 強烈姉妹と幽霊それから勇者
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季節の変わり目



 もうじき秋だ。いや、もう既に灼熱は過ぎ去り過ごしやすい季節すら過ぎていこうとしている。


 詰まるところ─────



「そろそろメニューを冬に向けて変更するからな?」



────と言うわけである。


 まだまだ暑くなることはあるのでは? と思ったが、アルマさんが何も言わず、ギーツさんがうええ、という顔をしていたので、間違いないだろう。


 メニューが変わるということは!覚えなくてはいけないことが増えると言うことだ。


 あまり気が進まない。


「って言うかこの時期が一番熱い物食べようとするひとが多いんだよにゃー」


「あ、フーデラさん。それは本当ですか?」


「マジ」


 眠そうな顔から真顔にならないで!?


 あぁだからギーツさんが嫌そうな顔するわけだ。


 と言うか、僕後二週間ちょっとでこの店、出るんだよね。


 そう思えば多少は気が楽になるね。






「そうだ、エリシア。明日の朝買い出しに行ってくれないか?」


 アルマさんがそう言うだけでエリシアさんは固まった。


 ……一瞬だけしか固まったように見えなかったが、確かに見えた。


 思いこみじゃないはずだ。


 アルマさんがそれに気付いたかは置いておくとして。


「メニューが秋冬用に変わるというのに、それ用の材料を買っていなかったからな。幸い明日は休日、気分転換にも良いだろう? 休日だというのに仕事のようなことをさせてすまないとは思うが」


「えぇ、良いですよ」


 自然な動きでエリシアさんは返答した。


 のだが。


「あいたっ!?」


 足元何もないのにずっこけた。


「……はぁ……あのな、エリシア───」


 時間的に夜中だと言うこともあり、僕はそれを横目に部屋に向かったので、それ以降は聞いていない。


 と言うか、あれからもう一週間か………。



────柚っちには、悪いことをしたかなぁ。


 教会の一室にて、黒河麻華は元々あったベッドでゴロゴロしつつ、詰まらなそうな顔で手からカードを出していた。


 どうやら『勇者としての固有能力』はこの何が書かれているわけでもない紙を出す能力────となっていた。


 しかし実際、私には紙に何が書かれているかが見えている。


「あぁぁぁぁあぁ…………」


 いつから占いを趣味としていたのか。


 思い出せないが、きっかけは親友だったはずだ。


 異世界にきて早々、楽しみが減ってしまった。


 悲しい。ただひたすら悲しい。


 占いだって、楽しくてやっていたのだ。当たるか当たらないか、人の行動を良い方に向かう助けになれたかどうか。そしてカードがそもそも何を意味しているかを予想すること。そう言うのが楽しかったのだ。


 それが必中の未来を映し出す『予言』に成ったとき、私は果たして占いを出来るだろうか。


 いや、出来るはずがない。分かり切っているから。


「私のカードは未来を映す…………なんて、最低よね」


 私はこの日から占いをするのを止めた。


 しかし、そんな事は新天地たる異世界にとって大した事ではないのである。


 私は、占いが好きだったのに。


「どーも……脱走しては……いないな?」


「勝手に入ってこないで下さいよ」


 と言うか、何でこの金髪はアロハシャツを着ているんだ。肌が黒く焼けているように見えるので、南国な印象を感じる。


 頭の上の耳を見ても、私としては異世界だなぁとしか思わない。


「自己紹介しようか」


「さっき長い名前聞いたのでエルさんで良いかなぁ」


 今の気分ではあの長い名前を覚える気にはなれない。いや、気分が乗っても覚えるのにはしばらくかかりそうではあるが。


「そう言ってくる奴が前にも居てな、別にそれでも良いぞ」


「フルネームで言えとかは?」


「まあ、こだわってはいたんだが。前に呼ばれたとき、割と悪くないと思ってな」


 ふーん。覚える気はさらさらなかったので別に良いなら良いかな。


「………どうした?」


 私の手元にカードがただ浮いている。


 そう言えば勇者の使命は『愚者』と呼ばれる人達の『討伐』。


 こんなカードで何が出来るんだろう。


「いや、何でもないよ」


 カードを消して起き上がると私は部屋を出ようとする。


 すると必然的、エルさんの横を通り抜けるわけで。


 でも私はすんなりとエルさんは通してくれることは分かっていた。


「すいません、街を見ておきたくて」


「そうか」


 私は廊下を歩く。


 なんとなく、どこへ行けば出られるかは分かる。そもそもあの私の部屋となっているところも誰にも聞かずにやってきたのだから。


「おい、紙片の勇者」


「何?」


 私は普段よりも不機嫌だった。


「暫くよろしくな」


「監視役と仲良くするつもりは少ししかないよ」


「あるだけマシさ」


 それだけ話すと、私たちは表に出た。


 文化レベルの明らかな違いから確かに異世界転移なんだと感じた。もしかしたらとてつもなく手の込んだ別の何かかもしれないが。


 でも、そうだとしても、それだけだ。


 街の地形を覚えておかなくては、後々来るであろう戦いに勝つことは出来ないだろう事は気付いていた。私はその事だけ考えて街を巡った。

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