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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
間章 α-2
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太陽の協会



「ここだよ。………連れてきたかったところは」


 まるでテレビ番組の企画のように、目隠し、耳栓をさせられた私は妹の手によって、とある建物の中に連れてこられていた。


「何処」


「協会本部。せっかくだし、本当のこと話そうかと思ってね」


 妹は、照れ臭そうにはにかむ。


「……じゃあ、まほうつかいだったの?」


「……あっれ、知ってたの?」


「つい最近」


「そうかー……? ……えと、何で?」


「優君が、大変だから」


「大変って……お姉ちゃんそれまで知らなかったんだよね」


 コクリと頷く。


「………大変だね、お姉ちゃんは」


「それで……」


「ん、私のほう? ちょっとばかり目がおかしくてね……その関係で色々。」


 へぇぇ。


 私達は、のんびり歩きながら、広間にやってきた。


 まるで、店みたいだ。ショッピングモールにあるフードコートみたいな。まあ、食べ物の匂いなんて微塵もしないけれど。


 フードコートと形容したとおり、椅子やら机やらが等間隔に置かれていて、私達はその内の一つに腰掛けた。


「それで、魔法使い? 魔導師って言うべきかな、が大きなグループを作ってて、その内の一つ。『太陽』の協会がここです!」


 わー、パチパチー! と妹は拍手をする。


 にしても、人数が少ない。こんなものなのか、空きすぎていた。


「もうすぐ大掛かりな仕事があるらしいからね、しかも超危険な。お姉ちゃん、虚無天使教って」


「知ってる」


「即答。まぁそうだね。……そこに技術提供していた人をとっちめる戦いらしいよ? 詳しくは知らないけどね? 私参加しないから」


「そう」


「そっけないなー」


「………でも、うん」


 責任取れなければ死ぬ、といった浅葱千由の忠告を思い出す。


 危険は、無い方が良い。


 黙ってしまった私。ただ言うことが無いだけだが、妹は何か言うのではとそわそわしていた。


 しかし、そんな所に来訪者が。


「あれ、雪幸さんじゃないですか?」


「柚里ちゃん?」


「………だれ?」


「柚里ちゃん。知り合い」


 菊川柚里はとてとてと近づいてきた。


 彼女の他に一人女性が後ろからゆっくり歩いてきている。


 見知らぬ人。でも、美人だ。


「妹さんですか?」


 柚里ちゃんはそう聞いてきた。


「ええ、そうですよ? 似てますでしょ?」


「うん、まあねぇー。確かに眼鏡無ければ見分けが付かないと思いますよ」


「そうでしょうそうでしょう。って鎧巫女さん!? わぁあ! お久しぶりです! 前の約束通りサインください!」


 ………鎧巫女と呼ばれた女性は、妹の言動にちょっと引いていた。


 それでも色紙にサインするくらいには良い人なのか。


「はい、これで良い?」


「ありがとうございますぅ!!」


 ………この美人さん、どういう立ち位置なんだろう…。


「巫女先輩? どういうわけですか?」


 単に気になったからと言ったように柚里ちゃんは聞いた。


「前、知り合いの目の話はしたわよね? 対処法を参考にさせてもらおうとして、話を聞いたまでは良かったんだけど、お礼を求められちゃって」


「それがサイン。と」


「………そうなの」


 彼女自身、戸惑っているようだ。少なくとも、サインする事には慣れていないように見える。


 妹は大事にしますと色紙を抱え込んで幸せそうな顔で頬ずりを………って、これ以上妹の変な行動を描写したくない。


 ……ほら二人とも苦笑いしてる。


「これで話は終わり?」


「え……あー。うん。実のところ魔導士でしたーと言うこと以外に特別言いたいことも無かったし」


 妹はそう言って目を閉じると、眼鏡を外して一度拭く。


「あ!」


 !?


 突然柚里ちゃんが声を上げたせいで数人しかいなかった広間にいた人がこっちを一斉に見た。


 ちょっと、びっくりさせないで………。


「この人、すごく強いですよ!」


「?」


 …………何で今、強さについて?


 頭に疑問符を浮かべた私達に対して柚里ちゃんは分かってないなぁと言葉を続けた。


「魔術……と言うか魔法と言った方が良いですか。兎に角この人に教われば良いんですよ!」


「?」


「あっれぇ……何かおかしい事言ったかなぁ」


「竜使……なんの冗談? どう見たってこの子、素人じゃない」


「確かにそうなんですけどね? と言うかこの子って、この人これでも私達より年上ですよ。あ、雪幸さん、竜使っていうのは私の魔導師としての名前です」


 早口で柚里ちゃんが言うと、予想外だったのか驚きの声を上げる。


 ……そんな私年下に見られるかなぁ。何が悪いんだろ……。


 当然その疑問には答えず、ただ何故魔法を教わるのといいかだけは言ってくれた。


「忘れたんですか? あの人達に魔法教わるんですよね? だったら師匠は多い方がいいじゃないですか」


「ちょっと待ちなさい? 私そんな事するなんて一言も──」


「してくれるんですか!?」


 あ、妹が追い討ちを………。


 これは少し申し訳ない。私はこの人に向けて断ろうと───


「……教えるのは上手くないわよ? それでもいい?」


 するより早く、向こうがやる気になった。


 ………まぁでも、いいか。


「………よろしくお願いします… 」


「あいよ。柚里、アンタもやるんだよ?」


 柚里ちゃんにむけての発言には刺々しさがあり。


「うぇ……分かってますよ」


 そんな返事を返したのだった。


「全く。私は用事あるから、呼ぶなら柚里通してで良い? 柚里とは知り合いっぽいし」


「……それでいい。かな」


 そう返答すれば、彼女は去っていった。


「お姉ちゃんっ! すごいすごいっ! 稽古つけてもらえるんだ! 良いなぁー!」


 私は。多少、どころか異常に高いテンションで騒いでも、余り迷惑にならないと思えるほどにしか人が居なくてありがたい………と思ったのであった。


「………一応言っておくけど、教えるのは得意じゃないわよ? 充分思い知らされたけど」


「!?」


 私と妹の間からぬいっと現れた彼女はそうはっきり言ったのだった。

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