オルカリエにて
どうも、お久しぶりです。
説明にあるとおり、更新ペースがグダグダになってしまっておりますが、暇なときに書き進めておりますので、完全放置する事はないです。
今後とも宜しく御願いします
この世界の乗り物………つまり移動手段は、やはり利便性に欠ける。
まあ、この島に限るのかもしれないがそもそも外の島には興味もないし、行ったこともない。
と言うわけで、今俺は────
「すまんな、リン」
「いやいやぁ…私だってネイシーに会いたかったし? あなたがそんな謝ることはないよ?」
隣に立っているリンというエルフはにへらと笑い、俺に触れていた手を離す。
「テレポートとか、結構消耗するんじゃないのか? それも」
「だぁーかーらー。気にしなくていいの! 私が来たかったついでなんだから!」
……俺からすれば、リンの方がついでに思えるのだが。
────つまり、そう言うことだ。
「………オルカリエ、ねぇ」
「ネイシーちゃん、元気かなぁ」
俺は、言われたとおりに一度オルカリエに来ていた。
テレポートは一度行ったことのある街の近くにまで瞬間移動できるのだ。ひとっ飛び。
街の中に入れないのか、と言うと答えはNOだけど。
「……ちょっと寒いね」
「それはお前が悪い」
俺は黒衣をなびかせて、街へと入る。
「うーん、特におかしなところはないよ?」
「そりゃ、そうだろ。随分前らしいからな。愚者らしき野郎……女っつったけか? が、暴れたのは」
「そうだっけ?」
「そうだよ」
俺達は街を歩き始める。
「いらっしゃいまっせー………おやおや、兄妹かね?」
どうやら、2人とも黒髪に近い色をしていたのでそう思われたようだ。
入った店の店主らしき人物は優しい笑みを浮かべ、俺達を見ていた。店は服屋か。
─────リン、俺より頭一つ分小さいし、そう思われるのも仕方ないか。
「まぁ、そうだよ?」
何故に疑問系。
「そうかいそうかい! ゆっくり選んで行きな!」
「元気だな」
何の気なしに、俺はそう言ったが。
「なんだ……気にでも障ったかい?」
店主の女は引き気味にそんな返しをしてきた。
俺はその反応を見て溜め息がでそうなのを我慢する。
目つきとか悪い俺だ、初対面の人だとやはりこうなるか。
「この場合は発言が悪いんだけど、それもまあ、やっぱり。ってとこだよね」
リンが俺以外に聞こえないような大きさの声で呟いた。
うるさい、ここ百年くらいで察してるっての。
「案外、普通に知られてるみたいだね」
「そうだな」
先程の店員に、俺達が探している人物について聞くと、あっさり特徴を教えてくれた。
ついでに、街は教会の人達が探し回っていたからたぶんこの街には居ないんだろうね、と親切にも教えてくれた。
「というか、本当に教会の人達いっぱい居るの?」
「居るだろ。ま、騒ぎ起こんねぇ限り動きゃしねぇから気にするな」
「ネイシー大丈夫かなぁ?」
「あの魔導書コレクター地味に有能だから下手すると愚者が起こしたらしい騒動に一枚噛んでそうだがなぁ」
街は特に破壊の跡が残っているわけでもなく。
騒がしく、人通りは多い。
しかし情報が手に入り、この街に居る可能性が薄いのなら、と俺達は人気の無い路地に足を踏み入れた。
「わー、直ぐ見つかった」
リンは無感動に言う。
「さっきまで心配してなかったか……?」
目的地を見つけたことに対して反応が薄いリンに俺は何でだ、とそのことに無関係に空を見た。
「………見間違いか」
「なんか見えたの?」
「………鳥。ま、気にするな」
と言うものの、リンは何と見間違えたと言ったのか分かっているようで、気にしたようにむすぅと俺を見ていた。
「あれ!? リン! それに……」
一つの家屋の扉が開く。
中から出てきた女性に俺は軽く手を振り
「よう、ネイシー」
「ひさしぶりぃー」
俺はネイシーの横を通り抜けて、その店の中に入る。
「って、また私の『世界』止めなかった!?」
「単純な実力差だ」
「あ、また瞬間移動してる」
「してねぇよ、『世界』の動きを読んだだけだ」
ネイシーは少し怒っていたが、それはただの勘違いだ。
リンは、見慣れていたからか特に反応することもない。見習って欲しいな。
「にしても、やっぱ多くないか」
「蔵書数は島随一だと思っておりますから?」
そんなどや顔されても困る。
『長耳魔法書店』
来たのは五回にも満たないが、それでも印象的な、圧倒されるほどの本の数。
まず間違いなく、管理は難しそうだ。
…………?
「おい、ネイシー」
「なんでござ?」
変な言葉使うなよ。
っと、そうじゃねえ。
「ここ、ごっそり無くなってるが?」
「あー、整理するの忘れてたー! や、いやいや。最近忙しくてねぇ」
ネイシーの口調は軽いが、目の下に隈が出来てるところや、顔がよく見たら青白いように見えて、その言葉の真偽を疑わなかった。
ま、寝不足なら忙しくなくてもやるしな。それよりも、だ。
「忙しい? お前に本の入荷と読書と蔵書整理以外にやる事なんて無いだろ」
「まあそれがあんたが提案して私が店の範疇でやるべきと判断したところだし、そう思うのも仕方ないけどね」
「いや、どう考えても読書は俺の提案じゃねぇだろ」
「内容知ったかして売れますかっての」
「あれあれ、何の話ぃー?」
リンがようやく近付いてきた。
するとネイシー。目を輝かせて
「ふあぁぁぁぁ!! リンちゃぁぁぁ!!」
リンに飛びかかる。
しかし、そんな事お見通しだと、リンはネイシーを気味悪そうに見た。
「ぺぷしっ!」
「危ないなぁ、幻影だから良かったけど」
いや、良くないだろ、顔面から地面激突してんぞ。
「うっ………ううう……」
「泣いた」
「泣いたな」
「わ、私悪くないもん」
わー、かわいいかわいい。
ってそうじゃねえしリンが悪くないことも分かってる。
今日のネイシーは何拗らせてるんだ?
「フィーちゃんが最近構っても反応しないのー…ぅぅう…」
フィーちゃんって誰だ。
「はぁ……」
「リンちゃん今つまらないことをって思ったでしょ! 違うの! 死活問題なの!」
「いや、無いわー」
「フィーちゃんは最近構っても反応しないのよ……」
「いやそんなマジな目で俺らを見るな、怖いから」
そもそもフィーちゃんって誰だし。
「ネイシー、フィーちゃんってそもそも何なの? 川トカゲ?」
「失礼な! フィーちゃんはれっきとした人間! に・ん・げ・ん! 女の子! そんでもって領主だよ!」
「……てこたぁ、お前。領主にちょっかい掛けてたのかよ」
「仕方ないのよ、可愛いんだから」
「お前、そんなキャラだったか?」
「大丈夫、不安定なのは自覚してる。ただひたすら不足してるだけだから!」
─────フィーナちゃん成分が!
「そんな事言うキャラではなかったと思うんだけど……」
「疲れてるんだよ、ほら、忙しいって言ってたろ?」
ネイシーのせいで心なしか俺まで優しい口調になってしまう。
「んあー」
どうみたって、おかしいもんな。
「……と言うか聞きたいことがあったんだった。領主に接点があるなら好都合な話だ」
「何ぃーい?」
何時の間にかいすに座り脱力して首だけ真後ろにだらーと向けているネイシーに向けて聞く。
「髪が三色に分かれてる女子を探してるんだが。例のこの街で騒ぎを起こしたとか言う」
ピクリと反応するネイシー。こういう時わかりやすくて助かる。
「もちろん知ってるよな?」
「………何? あんた何で探しているの?」
「年1の遠征で、教会の奴に探すように言われたんだよ」
「教会の方が探すに適してると思うんだけど?」
反抗的な態度。白い目で俺を見てくるネイシーに、リンが
「……ネイシー察して」
「うぇー? ヤだよ。頭使いたくなーい」
「そう言えば俺がやる必然性は無かったな」
「!?」
リンが驚いたようにこっちを見る。
「多分、口を割らないからだろうけどな。教会の人間に対して」
「分かってるんじゃない」
分かってる、て言うけどな。答えは示されないだろうし、分かるも何もないと思うんだがな。
「そう言うこと、人の前で言う?」
「別に良いじゃない、私とネイシーの仲だし?」
「そう言うけど本人の目の前で言うと誘導できないだろ?」
そう言うとリンは自慢気に俺に言う。
「ええそうですよ」
「………」
「で、でも良いじゃない、知ってるのが分かってるんだから」
「いやな? 流石に実力行使はマズいだろー…。調整できねぇぞ? コレ」
視線の先ではネイシーが椅子を盾にしてガタガタ震えていた。
──────まぁ即死技だからなぁ…
「ま、まさかまた潰すつもり!? く、屈し、しなな、しないわよよよ!?」
「どんだけビビってるんだ。取り敢えずネイシー、お前にはそんなことするつもりは無いから、安心しろ」
「流石にやったら私も止めますし」
「お、おお? そうなの? リンちゃんやっさしー!」
リンに飛びかかったネイシーはまた先ほどと同じように地面に激突する。
また幻影か。
「違うよ、今回は影分身」
「わからにゃいよ……そんな事」
ネイシーは恨めしげに本棚の上に居るリンの本体を眺めながら呟いた。




