第一異世界人発見……発見?
川を見つけ、それに沿って下ると、すぐに森からは出れた。
妖精達は力をくれたと言うが、そんな実感はない。
でも、何事もなく森を出れたので、そんな些細なことは忘れよう。貰えたかどうかは大した問題じゃない。
生き物はたくさん居たけれど、小動物ばかりで、安全に移動できた。
森と妖精達に別れを告げて、道と街を探す。
因みに先ほどの森は〈紅蓮の森〉と言うらしい。
「今の所、異世界っぽいのは、落ちたときの魔法と、妖精だけだなぁ。」
ぼやきながら何もない草原を歩く。森を出るときには既に空が白みはじめてたので、もう暗くはない。
地面は丈の短い草が生い茂っている。
半袖半ズボンという身軽な装備ではあるけど、それほど不便でもない。
寒くないし。というか暖かい。
暇なので、炎とか手からでないかなぁとか念じてみても、無駄っぽかった。何やら手順があるのかもしれない。
「………まぁ、文化的ではないよなぁ。」
進むに当たって、遙か遠くに浮いていた青色の柱の方角へと進んでいる。
「というか何なんだろう、あの柱。」
四本あって、それぞれが違う色。
青色の柱を正面に見据えれば、背後には赤い柱と─────
「山に突き立つ、すごい大きな剣……か。なんだろうあれは。」
────遠方に見える山々よりも遥かに大きい剣が突き立っていた。
うん。地球じゃまず見られない風景。異世界感。
「ん? あれは……。」
遠くを見れば、なにやら人影が見える。それも一つじゃない。まだ遠すぎて点にしか見えないけれど。
「…っ。おーーい!」
僕はその人影に向かって、僕は大声で呼びかけながら手を振り、近付いていく。走った。
誰もいなかったから、ようやく人に会えて少し嬉しかったのだけど、しかしその行動を一瞬後に後悔した。
人影が近付いてくる。同じように猛スピードで。
その様子に少しいやな予感を感じた。しかしそのまま速度をゆるめずに近付いていく。
そして漸く見える範囲まで近づいて、そしてここで後悔した。
その人影は一人どころではなく、十人ほど。そして人影は十歳児くらいの背丈で総じて細かった。肉付きが悪いとも言える。
だけど肌の色は緑で、目は血走っているように見える子鬼だった。
────そう、人じゃなかった。
所謂、ゴブリン。多分ゴブリンというか絶対ゴブリン。
「嘘でしょ………。」
彼らは刃こぼれした剣、手入れもろくに行き届いていないような防具を装備していたけれど。
「ナイフ一本で勝てないでしょ………。」
天使からチートとか貰ったり、妖精から力を貰ったりしたみたいだけど、使い方が分からないのでそれはどうしようもないのだ。
逃げるにも、辺り一帯が草原で見晴らしの良い場所なのだ。隠れられないし、逃げるにも限界がある。
いっそ諦めてくれるまで逃げるか……? でも、追いつかれて戦闘になれば体力消耗したままで十人……10匹相手にしなきゃいけない。
「最初の遭遇が……ゴブリン…。」
溜め息吐きたい。吐いた。
奇声を上げながら突進してくるゴブリンを見て、僕は持っていたナイフを右手に握り、構えた。