船上の戦場
船の甲板は、浮き足立っていた。
「どもー! 愚者を知りませんかーっ!?」
突然現れた、超戦士。勇者。
そのもの達が甲板に飛び乗ってきたからだ。
飛行魔法でも何でもない、ただの跳躍で。
「知るか! お、おまっ、お前らあ、慌てるな!! 勇者は私達に危害を与えられないはずだからな!!」
慌てながらも、そういった叱咤が飛んでくるのは、少しばかり有能である。グッジョブ
しかし、聞いた者も言った者もすぐに気づいた。
「《雷槌》!」
「ここ! 船の上ですーっ!!」
いくら危害を加えられなくとも、海を行く為の足たる船を破壊は出来る。
きっと投げ出されても死ぬことはない、だろうと言うことは勇者的観念からも伺えた。
つまりは。
「皆々沈んじゃえええっ!!」
勇者の青年の、雷を纏う右手が甲板に叩き落とされる。
爆ぜる床板。膨れ上がって炸裂した。
「うわぁぁぁぁぁあ!? やりすぎたぁっ!!」
己の技の威力で吹き飛んだ勇者の悲鳴は、しかし粉微塵になった船に乗っていた船員全ての悲鳴で上書きされた──────────。
「うっわ、ドハデ~!」
「ド派手て………船、原形をとどめてないですけどそれでいいのか……………」
勇者の一人が飛び乗った船の上で起きたことは、暗くなりかけと言うから特に目立った。
甲板の辺りで眩いばかりの光が放たれ、轟音とともに船が粉々になったのだ。船内に爆発物でも置いていたのかと思うほどの壊れ方である。
轟音の正体は雷?
遠くで走りながら見聞きしたので正確な事なんて分かりゃしない。だけど、とても音が落雷に似ていた。ゴロゴロー………って感じで。
「確かに、人の回収なのに、沈めるのもおかしな話だ。まー、勇者の行動一つ一つに教会が責任とる訳じゃねぇからな! 気にするな」
「気にするよ……エリシアさん沈んだらどうしてくれるのさ……」
「……………あ」
あっ! こいつ!!
「考えてなかったの!? これじゃ勇者達が当たりを引く前に先に見つけないと……!!」
焦った僕は、魔力を放出した。
「うぐっ!? なんだこれ、おもっ!?」
そう言ったエルは走る動きをそのまま止めた。
手足が宙をさまよう様は、はにわとか、某サボテン的モンスターのようだった。
まあ、本家とは違って固まって動かないんだけど。
「どうしたのエル、突然変な動きして」
「い、いいから! 俺のことは良いから先に行け!!」
少し必死さが見える。
僕は少しだけ疑いの目を向け、しかしどうでも良いかと間近の船に目を向ける。
「じゃ、先に行ってるね」
「あー、行け行け!」
「なんだよそれ………んじゃ」
僕は、魔力の密度を所々上げてて、船までの足場を作り、駆け上がった。
「おー、行った行った……あれって空中歩行………天駆? ……全く、とんでもない魔力だった…」
エルは体を、重さを確かめるように動かしてから。
「自覚無しほど面倒なのはない、か……取り敢えず、様子見と行きますかね…!」
エルはアサギが乗り込んだ船とは別方向に走っていった。
彼もまた一人で一隻を捜索するのだ。
「うおおおおおおおあ!!」
僕は船の上に駆け上がる。
「エリシアさんはどこだぁっ!!」
甲板の上まで駆け上がった僕は、そこの様子がはっきりと分かった。
「あっ」
臨戦態勢の船員が、僕を円で囲むように杖を構えていた。
「「「《ウインドブレス》」」」
──────高密度の風が襲い来る。
それは切り裂くカマイタチのようなものでなくただの超強風であった。
「がっ!?」
僕は耐えきれず船の端からあっさり頭から転落。
船から落ちる先は真っ黒な海。ほんの少し、透けるように赤が見えなくもない。
流石にまだまだ、僕は魔力の扱いに慣れていない。転落したまま魔力をクッションにするなんて発想が出てきたが、実現不可能だ。
「話くらいっ………聞けよ!!」
じゃあどうするか。いっそこの落下を利用しよう。被ダメージがいくらとか、多少のことでは死なないだろうし気にしない。
上下逆さのまま落下する僕は拳を水面に向け、なおかつその拳を魔力で包む。
繊細な魔力操作が出来るのは一瞬だが、問題ない。
「《憤怒》!!」
────あと、理不尽だけど、キレました。
僕が水中にダイビングを決めると同時に立った水柱は、船体を大きく揺らした────。




