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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 二章 豊穣の巫女と訳あり集団
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港を走る



「あー、もうすぐ暗くなっちゃいそうだけど、大丈夫かな?」


「何がだ?」


「エリシアさんのことだよ」


「平気でも大丈夫でもない。だから勇者数名引っ張ってきてるんだよ」


 エルが待つように言うので数分待っていたら何人か奥から出て来た。


 彼らは勇者を名乗り僕を睨むも、エルが「今はやめろ」と言うと今度は目を逸らした。


 だから僕、そんな敵視されるようなこと、したかなぁ……?


「でも、何で勇者?」


「船を沈めるため………っと、話が飛んでたか」


 エルと僕、おまけに勇者達は走っていた。


 僕には大変なことになったらしいことしか分かってないんですけど。


 どうやらその点を説明してくれるらしい。


「まず教会は全世界に支部を配置してあるんだよ、しかも連絡手段を有している」


「それは便利だね…で、それが?」


「……豊穣の巫女の話は大方理解できたか?」


「まぁ。ここ、島だったんだねー」


「随分適当に答えたな、まあ良いが。だから豊穣の巫女のいた国とその近隣の国の情勢もおおよそ分かるんだよ」


「豊穣の巫女の話は前から知ってたみたいだったけど、それで情報自体教会は持ってたのか」


「そ、豊穣の巫女は重要度はあまり高くないけんど、巫女の持つ祭具は一応、正確に確認はされては居ないが妖刀だ。見つけたらば保護と言う方針だった。ヨリシロノミコをどうするかは知らないけどな」


「………」


「あれ、気にならないか? 保護したらどうなるかとか」


「聞いたって無駄だし?」


「まぁな。俺は知らないからな」


 ならんで走りながら、会話は続く。


 勇者達は無言であり、僕としては気にしたら負けな気がした。


「んで、大陸外の、巫女のいた国を潰した国。そこがまた変な動きをしてたんだ。」


「変な動き?」


「元々、巫女は捕虜として船で移動していたんだ、ひとっ飛びで首都に行く為にな。一番海路が近かったんだろうな……。で、船は難破。巫女は野垂れ死んだかも知れないが確認する手段はない」


 走る内に、空気の匂いが変わった。


 これは、確か……。


「そんな所であんな目立つところで『自分は豊穣の巫女』だなんて宣言すれば、それはこの町に偶然いた例の国の奴が動くに決まっている。元々変な動きっつーのが、各国に和平交渉用に人を送り込んでくるってのな? 和平結ぶ気無いだろう事は分かっていても、な?」


 ………無碍には出来ず、捜索網を広げたと。


「って、そんなにエリシアさん………豊穣の巫女を欲しがっているの?」


「理由は知らん」


「だよね……で、今どこに向かってるの?」


「船だ」


「へ?」


 そっか、匂い。この匂いは海の匂いだ。


 いやぁ滅多に嗅がないからわかんなかっ


「豊穣の巫女は、その国の船にもうすでに居るだろうよ」


「それって………ヤバい、よね?」


 エルは少し走る速度を上げた。もう会話する事もないだろうから。けれど彼は首だけで振り返ると少しだけ、わざわざ言った。


「エリシアとかいう女の身柄は安全だろうが、多分お前にとってはなぁ」


 僕は聞く前に《MPバースト》を使用し、敏捷を上げる。



「──────とびきりヤバい」



 ほらな!!



「見えた! あの赤い船!!」


「おおー!? って!!」


 エルは港に指を指して大声で言う。


 しかし、僕はその指が指す先見て目を丸くする。


「あんな何隻もあるなんて聞いてないんですけど!?」


「当たり前だ! 言ってなかったからな!」


 赤い軍艦が1、2、3、4、5……8隻あるんだけど………しかもでかい。


 見上げるほどの大きさと、数に、僕は驚きを通り越して呆れた。


「どこにエリシアさんが………」


「ん? そんなん探す必要は無いはずだろ? なぁ、お前ら」


 エルは後方にいた勇者達に話しかけた。


「全く、勇者として久しぶりの仕事だって言うから」

「来てみれば」

「また、この世界の人に被害を与えられない能力を生かした敵対建物の穏便な破壊ですか……」


 勇者達も呆れていた。


「まぁ、そう言うなって。噂じゃあの国、愚者大量に抱え─────


「よし行こう」


「すぐ行こう」


「数秒で片を付ける」


────込んでいるらしいから、作戦に参加してるかもって!!? はええよ!? 話くらいゆっくり聞けよ!」


 勇者達は愚者という単語を聞くやいなや飛んでいき船を襲い始めた。


 何アレ………こええ。


「おい、何ぼさついてやがる、行くぞ!」


「え、ちょ、あんな大破壊で文句とか────うわぁー!?」


 エルは僕の腕を引っ張って、走り出した。


「気にするな! お前が得することだけをお前は第一に考えていればいいんだよ!」


「多分それとてもよくないと思うんだけどなぁっ!?」



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