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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
序章・夏の日
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転生のお知らせ


 暗闇に沈んだ意識は覚醒し、何もない空間に僕はいた。


「ここ………どこ………!?」


 真っ白な、影も壁も天井も床も無い。


「ってどうやって立ってるの!?」


 ……たぶん床はある。


 ぴょんこぴょんこ跳んでも、何かにぶつかる気配はない。


 跳ぶ度床の高さが上下したため、すっころびそうになる。


「………何か、怖いなぁ……」


 取り敢えず、てくてくと歩いて見る。真っ直ぐ、前へ。


 歩いていても、突然床が沈んでいる所があり、転びそうになる。


「危ない空間だなぁ」






 しばらく、歩く。ひたすら歩く。


「迷い子さん?」


「ひゃいぃっ!?」


 とにかく足元に気をつけながら前だけ見て歩いていた。


 だから唐突に背後から声をかけられたとき、飛び上がりそうなくらいに驚いた。


 否、実際飛び上がった。


「そんなに驚かなくても良いじゃないですかー…お化けじゃないんですから」


 女性特有の高めの声。その綺麗な声を聞き、振り返るとそこには。


 文字通り、天使がいた。


 でも何故だろう。頭の中で警鐘が鳴り響いていた。


「どうも、私は見たとおりの天使です」


「はぁ」


 そう名乗った彼女は微笑んだ。


 見たとおり、と言われると。艶やかで緩いウェーブのかかった金髪、新雪のように白く汚れの知らない肌、澄んだ空のような色をした双眸。服が大きすぎて白一色の袖やら足元までだらしなくしわだらけにしているが、間違いなく。


 美人である。ちゃんとその背中に羽が生えていて、天使っぽいなぁ、という感じである。


 しかし、見たとおり、なんて言われても。と僕は生返事で返した。


「もう。その顔、信じていませんね?」


 腰に手を当てて膨れっ面でそんなことを言う天使。


 ちなみに彼女の頭上には天使の環っかみたいな物は見当たらない。そう言うものなのだろうか。


「……天使と言われていても、僕にはよく分かりませんから」


「ええ、分からないなら分からなくていいんですよ。私には や る べ き こ と があるんですよ」


 なんだか分からないけれど、少し寒気を感じた。


「え…と…やるべきこと、ですか? 実はドッキリでしたと僕に言う係とか………じゃないですよね、どう考えたっておかしくなりそうですもん、この空間。限り無い、と言えば聞こえが良いですけど何か息苦しさを感じますし……」


「────やっぱり、違うのね」


 突然無表情になり、そんな事をつぶやく天使。


「………?」


「えっと……全く。そう! 全くよ!」


「何ですか?」


 意味不明な言動。


「全くもって理解できてない顔よね!! ようこそ死後の世界に!!」


 死後の………世界?


 僕の頭はその言葉を理解できず、首を傾げ、呟いた。


「何か、楽しそうですね」


「え? あぁ、そうかしら? そんなつもり無いけど、そう見えるならそうよね!」


 何故か嬉しそうだ。


「あなた、まだ生きることに未練はある?」


 ………未練? 大ありだ。でも何でそんな事を聞くんだ? 僕はまだ……ん?


「あなたは一度死にました。でも私はあなたの生き様に深く感動しました! そこで一度チャンスを上げましょう!!」


 テンション高めで続ける天使。


 ……ってちょっと待って。今なんて言った?


「え……? 僕、死んだの?」


 僕には信じられなかったが、漸く思い出す。僕が最後に見た光景を。


「ええ。肺を撃たれたんですから、仕方ありません」


 素早く肯定する天使に、ああそうかぁ……と譫言(うわごと)のように返す。


 どこか上の空な僕の様子をスルーして天使は話を続ける。


「一回のチャンスです。それは所謂ファンタジーな世界に跳んでもらいましょうという話です。うけるもことわるも、自由です」


「ただ、私のお願いを叶えてくれれば、元の世界で生き返れるように取り計らいましょう」


「………本当に?」


 未練がどうとか言っていたのはこのことか。


 僕が納得していると、天使は


「本当です。どうします? うけますか?」


 そんな悪魔の質問をしてくる。


 僕はその質問に


「受けるに決まってるじゃないですか」


 即答した。


 悩む必要などない。自分の中の何かが危険だと訴えかけてきていたが、気にしなかった。


 何も言えずに死ぬなんて、嫌だったから。



「ありがとうございます。えと……」

「浅葱 優です」


「では、浅葱優さん。頼み事というのはですね」


 今までの笑顔と一変、急に真面目な顔になる。


「これから行く世界に沢山の〈悪者〉が居るんです。それを最低一人狩って下さい。……狩らなくても、元の世界にて生き返れないだけで、特に罰則は無いんですけどね」


 〈悪者〉?


「〈悪者〉って言うのはですね、危険思想者を増やしたり、人を狩っている人達……私が言っているのは一部の人達のことで、彼らは、今から言ってもらう世界の言わば〈歪み〉です。会えば分かるようになっていると思うので、見つけたら即刻狩ってください。」


「へえー……。」


「でも彼らには一人一人特殊な能力を持っています。だからあなた達………あなたにもあげます。所謂チートってやつです。」


「何くれるんですか?」


「それは、向こうに言ってからのお・た・の・し・みです。」


 そう言うものだろうか。


 まあ、僕は少々小説を読んでいる。多少異世界チート物には憧れもあった。


 だから、この状況に少し……本当に少しだけ、わくわくしていた。


「そんなそわそわして……まだ説明は終わってませんよ?」


「えっと、後は何があるんですか?」


 天使は少しだけ勿体ぶるように間を空けた。


「 この異世界にはあなたの魂を送ります。最後に強くイメージが残った状態のあなたです。……肉体は向こうの世界で死んでいるのだから当然ですね…。」


 苦笑いと共にそんな事を言う。


「では、良き異世界生活を!!」


「はい!」


 力強く返事をすると、足元に沢山の波紋のような影が広がる。


 違う、波だ。


 波が立っていくほどに体は白に沈み込み、ついに足元に穴があいた。


「って!? ええ!!?」


 驚いて天使を見れば、笑顔で手を振っていた。


 そうして自由落下から始まる異世界生活が幕を開いたのだった。










───そして、プロローグに戻る。



 感想募集中!! 


 評価や感想をくれると有り難いです!! 具体的に言うと作者が跳ねます、面白いくらいに。


 初心者なのでどういったタグをつけて良いか分からないので、つけるべきタグについても募集中です!


 今後ともよろしくお願いします!!

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