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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 一章 後編 栄華を極める富豪の街
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生活費



「にしても、凄いなぁ……」


 辺りを見渡しても人、人、人。


 もしかしたらリーダナブルよりも人混みが激しいのではないだろうか。


「だろう? 豊かな水源を誇る都らしく多くの水路が走り、領主の財力は街に還元されて、道はしっかりと整備されて、尚且つ家々の景観は素晴らしいの一言に───」


 フィは誇らしげに胸を張る。……胸は……うん、察して。


「何だよ…?」


「え、いや。まず服買おう、これじゃ目立つと思うし。」


 考えていたことを悟られないように話題を変える。


「服か………金、どうするか。」


「確かに。」


「金……金は冒険者ギルド行けば何とかなると思うけど。それ」


 そう言ってフィが指をさしたのは、僕の左手。


 左手を掲げるとじゃらりと音を立てる鎖と腕輪。


「右手の方は」


 右手を上げる。そこには腕輪は存在しない。


「どうしたの?」


「親切な商人さんに砕いて貰ったんだよ。」


「親切な商人さん………ねぇ。じゃあ、左手は?」


「何時でも外せるようにしてもらったよ。問題ない」


 そう言って右手で、左手の腕輪を外す。


「…………ま、外れるなら良い。奴隷商人に見つかったら、大変だ」


「分かったよ、町中では外しておくよ」


 左手の腕輪をリュックに放り込んだ。






「いらっしゃいませ。どの依頼を受けましたか?」


 冒険者ギルドに行くと、いきなりフィが掲示板に張られていた貼り紙を剥がして受付に向かうと、受付のお姉さんがそう言った。


「………こちらでしたら、三日以内に、報告をお願いします。討伐はステータスのログに残りますので、こちらの道具にステータス窓を填めていただければ、そちらで報告は完了となります。……安心して下さい、能力値、適性は覗くことが出来ないシステムになっております。」


 そう言って受付のお姉さんは受付横の、完全に机に固定された石板を指した。


 石板には長方形の窪みが存在し、多分そこにステータスを填めるのだろうか。


「パーティーはいかがなさいますか?」


「そこの人と」


 そう言って、ギルドをほへーっと眺めていた僕をフィは指した。


「分かりました。」






 そして、街の外に出る。


「……パーティーって?」


「経験値を共有して入手できて且つ依頼の内容を共有も出来る、ギルドで登録可能なグループ。ついでに私も冒険者カードさっき作ったし、パーティーを作ってもらった」


「何の依頼受けたの?」


「ゴブリン五頭討伐。当面の資金にはなる。干し肉あるし」


「干し肉は保存食で、街にいるんだったら普通のご飯食べようよ」


「安く済むに越したことはない」


 街の外、街道から逸れたところに迷いもなく進んでいくフィについて行く。


「やけに迷い無いね」


「…………来るぞ」


 フィが止まれというので、僕は左手に腕輪を、右手にナイフを装備した。


 ……………って。


「………遠くないか?」


 ここは草原である。


「そりゃあ、用意してから接近しないとな」


「そう言ってるフィーは?」


「………私はこれで充分だ。」


 フィは拳を握り締める。……まあ、イフェルの時の感じならそうだろうけど。


「それと、私の名前はフィだ。伸ばすな」


「えー…良いじゃない、フィー。言いやすいし」


 フィは苦虫を噛んだような表情を見せ、しかし諦めたように


「仕方ない……か」


 呟いた。











「お疲れ様です。こちら依頼の報酬です」


 僕達は、ゴブリンを丁度五頭討伐して街に戻ってきた。


 お金だ。


 僕が取ろうとすると、間に体を入れてまでもお金を取った、フィ。


「今日、お前ほとんど何もしてないだろ」


「………うぐ…」


「それと、この街の物価分からなくて詐欺られる可能性があるからな、私が管理する。いいよな?」


「良いけど……」


 それからフィは良い笑顔でこう言った。


「安心しろ、お前の服は私が選んでやる」


─────……全く安心できない!!

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