一つの終わりと一つの始まり
「────はーい、綺麗になりましたよー」
目を開けると、髪の短い女の子がいた。あ、これ僕だ。これ鏡に映った僕じゃないか。
戸惑う。
ここは───美容室か。
「どうかいたしましたかお客様ー」
「いや、えっと………」
帰ってきたんだ。幾つもの悲劇の元凶を打ち倒して。
ショッピングモールにせっかく居るんだから、と美容室を出た後いくつかの店を回ることにした。
あの日は散々なことになってしまった。それに何も残ってなくて、覚えていなくとも、僕は皆に助けて貰った思い出がある。
何かしらの礼をしたい。そう思っても大した手持ちはなく、お菓子売場でなんか買おうかなと彷徨いていた。
………あー、よく考えたらあの二人の好み知らないな……。
「………何買おう」
……周りを見ると夏だって感じる服装をしている人が多い。多分あの日なのかな。
と言うことはアイスで良いかな。
「よし、行くか」
そうと決まれば直ぐにでも。アイス売場に直行だ。
「ただいま、帰ってきたよ」
家だ。
僕の、家だ。
「お帰り、ってどうした!?」
「いや………なんか………帰ってきたって思ったら……」
止まらない。
「お兄ちゃんおかえ………お姉ちゃん何かした?」
「してない、してないから」
涙が、止まらない。
「ははは………ただいま。うん、大変だった、大変だったんだ……」
「…………?」
「ごめん、今はちょっと泣かせて……」
僕は帰って来れたんだ。
ちゃんと、帰って来れたんだ───。
目を覚ます。
森だ。
「あの神様、ちゃんと………」
時間を超えた。またさらに過去に戻る。しかもこの世界のこの時間軸だけを切り離した。
完全な蛇足。その発生を願ったのは他でもない僕の『もっとこの世界を見ていたい』という感情だ。
僕があの場所に帰れないのは不安だが、あの時間にも僕はいる。
この、今いる僕の方がコピー。
「でも、フィーナとかエリシアさんとか、心配だし」
きっと取り越し苦労、事の後で骨折り損とか言うのかもしれない。
僕は、ステータス窓を開こうとして、開けないのを確かめた。
「やっぱり、愚者としてじゃないね。やっとあの身分から解放されたと思うと清々するね」
『しんにゅーしゃ?』
「あー、えっと。違いますよ? 森から出たいんです」
声、それに反応して僕は答えた。
『ふむ、あんないしてしんぜよう』
「ありがとうございます」
森の先を見る。眩い光だ、輝いている。
きっと、この再びの旅路を、祝福してくれてるのかもしれないな、なんて脳天気に考えて。
「……ははっ」
不意に笑いが零れる。
後悔なんて、知らない。
僕はここから、もう一度この世界を。
──────今度こそ全力で楽しんでやる。
────第一部・完
《ここからは作者の後書きになります》
構想から最後の方が外れてしまい(第一部)なんて銘打っておきながら、ここで一度筆を置くことを、先に謝罪いたします。
本音を言いますと、自分に細かい管理が向かないのがはっきり分かったんですよ。
いい感じで終わりに出来たか分かりませんけど、第二部はやるかどうか、分かりません。気分が乗ったらゆったりと進むかもしれないです。
今の所、新作を書こうとしてますけど。
これを書いているのは、掲載一月前なんで、今どうなってるのかは知りませんが、取り敢えず今度は二つくらい同時に進めてみようかなんて……この作品放置したりしてたんだから無理じゃないかって?
ええ、多分無理。絶対どっちか放置します。今大学行きながらバイトしてるんで、私生活もピンチ。これでソシャゲ沼にはまりこんでるんだから………ほんとこれ成立させてる人睡眠時間どのくらいなんですかね(寝てないこと前提と断じた)
今作は終わりを決めてから書く手法を再び使用していました。まあ、慣れてないせいか途中がグダグダしてたし、そのせいで盛り上がりが若干(それ所でなく)欠けてたように思えますし。
ええ、実力不足。書いてるこっちは楽しいんですが、やはりもっとしっかりしないと駄目でしょうね。
うん、二部練り直しですな。浅葱優君にしっかりとした道を作って上げねば。
拙作でちょこちょこ出てた今作のラスボス。消えたんですね、遂に……最初は普通に倒す予定だったんですけど、何でかなぁ(消却)
とまあ、語りはこの辺で。
二部、もしくは次回作でお会いしましょう!!
─凌吾─