神の力を再びその手に
エルフは天使から造られた。詰まるところエルフな彼らは天使にどうやってもエルフという存在単独で勝つことは出来ない。
それは二人も理解するところだ。
「フーデラ、降りて」
「名残惜しいけど仕方にゃい」
天使は手負い。アサギ目掛けてレーザーを撃ち込み続けているようだが、ギーツの《光鏡》が阻んで届かない。
「あらあら手負いの私を見つけてワラワラと雑魚がやってきましたか」
「あぁ、今からお前はその雑魚のせいで死ぬ。楽しみにしてろ?」
「おい、私達は時間稼ぎだと……!!」
「んなこたぁ、知ってるよ」
「へぇ、あなた達のような私の 僕とも呼べる虫螻共が! 私を留め置こうなど、ましてや!! 私を殺そうなどと思い上がり! 後悔しても知りませんよ!?」
「後悔なんざするかよ!!」
ただ、この戦いの参加者はエルフだけではない。だからこそ、彼等は死ぬ気で時間を稼ぐのだ。
最も死んでやるつもりなど微塵もないのだが。
「陸着いた!!」
「おう、きたな! 久し振りだな優!!」
「そうだね! 久し振り!! で早速だけど用件手短に!!」
「任せろ! 確認とか色々かっ飛ばす! ステータス開け」
「開いた開いた! 何これ」
「スキル履歴な、ちょっと見せろ」
ステータス窓に大量の文字列。何が書いてあるのかは読めず、そしてそれは上から下へと高速でスクロールしている。
「あった、《神の威光:クロクス》? おいおい何てモンを……」
「カイ?」
「ステータス更新なんて変なデータ吹き出した特異点あったから戻ってきたらとんでもねぇもん見たわ。お前時間を超えてきたのか?」
「………うん。そう」
「未来でどんなことになったか、どうやって過去に来たかは聞かない。だから今のお前に必要な情報だけを渡すぞ。《神の威光》ってのは一回こっきり神が使用者を経由して神が裁きを下す特異な技能だ。対応してないからバグって威力が落ちた。ついでにお前のステータス画面の殆どがバグってる無事なのはHPMP位か」
「一回って言ってたけどもう使っちゃったよ?」
「《神の威光:クロクス》ってあるだろ? そのつながりを無理矢理広げてもう一度会ってこい。次の一撃にバグは起こさせない。………あーっと天使に発動してからある程度振れ続ける必要があるみたいだから気をつけろ」
「分かった。繋がりを広げるってどうやるの」
「こうするんだ」
カイの右手が僕の頭を掴む。
─────すぐに意識が途切れた。
「─────外すな愚か者」
……えー、仕様知らないですし。
「もう一度授ける。これが最後の機会と心得るが良い」
掴み続ければいいの?
「左様」
分かった。次こそ外さない。
「早く戻るが良い────」
「戻ってきたな?」
カイが手を離した。
「うん、貰ってきた」
「そりゃ、見たら分かるわ………ついでにこれ持ってけ。エリシアが渡してくれと」
「そうか、このナイフ」
「ずいぶん見た目のショボいナイフだな」
「ま、そうだね。でもそれは変えられないし仕方ないよ」
「ついでに、まだ辛うじて繋がってた何かを繋げ直したぞ。まあ、恐らくは一番強い繋がり……って言うか切り損ねてる色を見れば察するがな」
首もとまで切った髪。強いて言うなら今の僕の髪の色は黒一色だ。
「………カイ」
「ンだよ?」
「ありがとね」
そう言うと僕はナイフを逆手に持って突き刺した。