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不完全愚者の勇者譚  作者: リョウゴ
第一部 最終章 浅葱優は勇者となる
184/190

決戦の夜



 無茶苦茶な景色を夢に見た。


《ステータス更新中98/100%》


 理不尽な景色を夢に見た。


《ステータス更新中99/100%》


 あの日の決意が、今に来た。


《ステータス更新完了!!》


【アサギ ユウ】

【Lv】103


【HP】 153 【MP】 19307

【力】 143 【魔力】31

【体力】137 【技量】178

【敏捷】219 【運】 252

【癒力】29


【火】(E-)【水】(E-)【風】(E-)【土】(E-)

【妨害】(E-)【支援】(E-)【浄化】(E-)


【技能】

《女装》

《演技》

《憤怒》

《MPバースト》

《三倍撃》

《魔力操作》

《瞑想》

《鬼戦術技》

《祈魔術》祈りが通じ適性を超越する




   ◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ああ、この夜だ。


 窓は開き、一人が、誰にも気付かれずに不法侵入。確かこの日は誰も彼もが疲れていた。


 ああ、羽を額に感じる。


 決戦の時は来た。


「────《武器生成》」


「嘘っ!? あぐぁっ!?」


 起き上がった僕は、両手にナイフを作り出して不法侵入者の両手首に刺し、壁まで押し、ナイフを長い杭に変成する。


「お前だったのか、星巻アリサ」


「っ、何で私の名前を!?」


 床にはまだ無色透明の十字剣が転がっている。あれはあの頃は相棒だったが今の僕には必要ない所か積極的に不要と切り捨てる物だ。拾うつもりは欠片もない。


「お前がバカだから、じゃないかな?」


 馬鹿と言われるのは嫌いなようだった。それは覚えている。しかし、あまり顔色は変わらない。何を言ってるんだろう、と言わんばかりに。


 あー、うん。確かに何言ってるんだろう。僕は。


「そもそも僕にこのとき会ってるんなら、あの頃覚えてない素振りはおかしいじゃないか………ってことで演技ですかね? 違う?」


 とりあえず倒してから考えればいいのに。


「ふふっ、あの頃というのは分かりませんが、見事ですね我が──」


 壁に磔にされたまま不敵に笑う女性は顔が変わり始める。僕はその額に手を当ててこういった。


「クロクス、どうぞ」


 ─────その瞬間極光が視界を埋め尽くした。




 壁に大穴、空に抜けていく光。これはなーんだ。


 答えは簡単。あの光とは別に天使が空に居たからね。そう。


「おぁぁぁぁああ!!! こんなことするならちゃんとしとめろぉ!!」


 あの神しくじったのだ。


 天使は逃げた。一度きりの威光とやらは失敗した。天使が余裕を失っている様子が吹き抜けになった部屋から逃げる天使の背中からも分かる。


「───んぅ……」


 エリシアさんは寝てる。え、今ので起きない?


「あらあら今のは……何てものを……どこの神由来ですかー?」


 その質問には答えない。それと。エリシアさんの妖刀が部屋を転がっていたので拾う。あと天使逃げながら質問するな、答え聞く気無いでしょ。


「────目覚めたが、どうやらの私助力が欲しいだけと言うことか……天使を相手では私も刃が立たぬだろうしな。それといくら人の成長が早いとは言え、昨日の今日で変わり過ぎじゃないかのう」


 妖気、とでも呼ぶべきものが刀に吸い込まれていく。


「ごめん、それと、助かる」


 空に飛び出して、天使を探す。ここで逃がしたら恐らくはもう会えまい。


 向こうはただ世界を滅ぼす時間まで隠れて待機してればいいのだから。


「………いた!!」


 海へ逃げるつもりか、港の方へと飛んでいく天使。天力を用い、《軽重力化》をして、思い切り空中に作り出した魔力壁を蹴飛ばす。反作用で僕が飛んでいく。


 秋には無理だったらしいが、僕が天力と魔力を同時に用いても問題は何ら無い。ただ魔力と天力はあまり相性が良くない為、HPが無くなったらどうなるか僕には分からない。弾け飛ぶかもしれない。


 最初から本気で行く。


「鬼歩七歩《破邪》!!」


 天使の後ろ姿目掛けて一直線に飛びかかる。振り向いた天使がニヤリと笑った。


「遅いです──「《加速・劣化式》」──よ───?」


 《加速・劣化式》。秋の魔術《加速》の劣化版だ。本家版よりも扱いが簡単であるかわりに、当然のように本家には到底適わないが、それでも充分に加速する。勢いを増して天使の片翼を斬りとばした。


 切り落とされた翼が海へと落ちていく。天使が落ちないのは、恐らく翼は飛行的には飾りだからだろう。


 狙ったとおりに当たれば天使の上半身と下半身を分断できただろうが、まあ、避けられたものは仕方ないだろう。


「くっ……何て事を!!」


 天使は僕を睨んでいるが、どうもまだ本気度が足りていない。まだ、品定めするような目で見ているように思えた。


「舐めて貰っていた方がやりやすいからそれでいいんだけど、それとして僕は容赦しないからね──《炎華閃》」


 妖刀を振り上げる。妖刀に炎が纏わりついて、炎が天使を襲う。《炎華閃》は茜屋先輩の魔術の一種。斬撃系の武器に対して炎を纏わせる魔術だ。


「《武器生成》《炎華閃》」


 生み出したのは《カード》。あの勇者の攻撃手段であり能力である。が、勿論様々あるであろう勇者の固有能力なんてなく、自由に飛び回る斬撃武器として生成した。


「あぁ、何て事でしょう」


 僕は目の前の空間に指を走らせる。魔力を線として空間に文字を書く。


「《武器生成空間(ウェポンメイカー)》!!」


 この術式には不要なまでの過剰な魔力がその文字列を中心に広がっていく。その空間が《武器生成空間(ウェポンメイカー)》の範囲内だ。


「そんなもので」


「《隠密》《幻影》」


 姿、音を極限まで霞ませる魔術《隠密》は姉──千由の魔術だ。《幻影》は幻を見せるものだ。


「この私を」


 燃えるカードが天使に殺到する。それは海から飛び出した羽根が一瞬で吹き飛ばしていく。


 まるで武器が意志を持ったかのように虚空から生まれて天使に何本も飛びつくが、またも羽根が弾き飛ばしていく。


「殺せるとでも」


 遂に動いた僕の袈裟切りが天使の作り出した障壁に阻まれたのを見て、僕はやっと────


「《重力解放──空震斬》燃え尽きろ!!」


 天使の背中に振り下ろした妖刀がものすごい勢いで炎を吹き出して、爆ぜて焦がして、切り裂いた───。

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