同郷の者達
「────死ね」
サイトーさんは確かにそう言ってきた。
僕に向けて突き出された手のひら。その先から氷柱が形成される。
サイトーさんはまっすぐ僕の目を見ながら
「《アイシクル・ニードル》」
手のひらの氷柱をこちらに射出してきた。
とっさに手元の鎖を左手で右手手付近のを掴み、ピンと張った状態で”目”の前に持ってくる。
キィィィン──
ガチガチと鎖が鳴るけれど、どうにか鎖のリング部分にはめるようにして防ぐことに成功。
しかし鎖は一瞬しか保たなかった。
嫌な予感がして顔を思い切り逸らす。と、鎖がうるさく弾け飛ぶ。
丁度、右手枷にもっとも近いリングを弾き飛ばして。
氷柱は顔を掠めて飛んでいった。
「おいアサギ! 大丈夫か!?」
ついに追い付いてきたケビン達。ケビンが心配そうな声を上げる。
心配は有り難い。でも礼よりも先に言いたいことがある。
「非道いじゃないですか突然!! なにするんですか!!」
僕は叫ぶ。
しかし、サイトーさんは無言で背中の長剣を抜き、両手で中段に構える。
「…………」
その様子を見て、サイトーさんの隣の少年がぼそりと呟く。
「ああ、そいつが。………良いよ愚者、そいつはオレがやる。オレにはこの世界の雑魚に手を出すことは出来ないからな…。」
サイトーさんはその言葉を聞いて、肩の力を抜いた。が
「───言いたいこと、分かるよな?」
続けて放たれた言葉に、身を固くする。
右手にナイフを持ち、それをサイトーさんに向ける。
彼我の距離はずいぶんと開いている。
「サイトーさん! 何で攻撃するんですか!!」
「勇者のせいだ!」
即答だった。
その答えと同時にこちらに走り出すサイトーさん。右手に持つ剣を肩に担ぎ、左手をこちらの方に向ける。
「《アイシクル・ニードル》」
突き出された左手からまた氷柱が飛び出す。
────ヤバ、対応できない!!
しかしそれは僕の顔を掠めるような至近距離を通り過ぎていく。
「後ろ!?」
狙いは後方だった。まさか追っ手を………?
しかし、聞こえ、振り向いた先の光景で、狙いを悟る。
「グッッ!! アァァァ!!!」
「おい!! ケビン!!」
氷柱はケビンの肩に突き刺さり、ケビンは地面に転がる。氷柱の速度と痛みによって。
しかし突き刺さった氷柱は貫通していた。倒れたケビンは地面に当たる氷柱により傷を広げられ、その氷柱に二重の苦痛を味わうことになる。
「サイトーさんッッッ!!」
怒り。
僕が前に向き直ると、サイトーさんは長剣を振り上げたところだった。
振り下ろされる長剣。
向けて左手で鎖を持ってブン回し、鎖を長剣に当てる。
咄嗟の判断だった。結果ほんの少し剣筋が逸れる。
鎖を手放し、僕も左に身を逸らす。
「ったく」
サイトーさんは剣を振り下ろしたまま、僕を抜き去ろうとしている。
後ろ、ケビン達を狙っているんだろう。
「させない!!」
僕は、僕から注意を逸らして抜き去ろうとしたその脇腹にナイフで叩きつけるように斬りつけた。
素早く反応して、剣をナイフの道筋に当てる。
当たったナイフの跳ね返りが凄い。思えば、ナイフで攻撃するのは初めてな気がする。
「邪魔をするな!」
でも力不足か、サイトーさんの叫びと共に振り払われる。
「そうそう、オマエの相手はこのオレさ」
不気味な笑いを浮かべる少年は、よろけて後退する僕に向けて
「オラ喰らえよ!!」
手元に作った一つの炎の球をその手に持った棍で打ち出した。
避ければ後ろは────ッ!!
僕はサイトーさんを無視し、左手の鎖を振り上げることで球を上に弾き飛ばした。弾き飛ばせた。
その隙にサイトーさんは僕を抜き去り、後ろへと行ってしまった。
「待って!!」
言うも待つはずはない。
「余所見はダメだなぁ!」
一瞬で接近してきた少年に背中を殴打され、転がる。
「かはっ……!!」
転がる背に上から突くように振り下ろされる棍。
「相手はオレだから、なあ!! なあ!!」
痛い……痛い…痛い痛い痛い痛い痛い痛痛痛痛痛痛痛痛痛!!!
───【HP】13/42 ───




