奴隷達は。
四話の後に新たに一話投稿しております。既に読まれていて、読み損ねている方が居れば呼んでおいて下さい。
では以後もこの話を宜しくお願いします
「おいコラ餓鬼共早く来ねえなら発動するぞ!!」
「あっ、はいすいません今行き」
そこまで言ってから苦しそうに呻きフラつく白髪の少女。
先程された手枷が仄かに光っている。僕のも、白髪の少女のも。
この手枷……というより腕輪か。手を拘束する意味合いが薄い。2つの腕輪は鎖で繋がれているだけで、そんなに酷い拘束をしている訳ではない。キツさでは、馬車で運ばれている頃が一番ひどかった。
今が自由過ぎて怖いくらいだ。
……脱線したけれど。
「ありがと……。」
フラついたまま倒れそうになった少女に肩を貸して、呼ばれた方向に歩いていく。
ステータスを開きっぱなしで偶然、見えてしまった。
【MP】7529/7570
MP減ってる!? というか上限増えてる!?
「おせぇぞ!!」
奴隷商──毛達磨ではない──は頭に血が上っているのか、顔を真っ赤にして持っていた鞭を振るう。
パシィィ!!
まさかすぐ手が出るとは思っていなかったので、殆ど対応できず、顔を鞭で叩かれる。
視界が一瞬真っ白に止まる。
「だっ……」
白髪の少女は声をかけようとして止めた。
きっと奴隷商は思い切り睨んでいたのだろう。
「ふんっ」
意識が混乱している間に、奴隷商は僕の腹を蹴飛ばす。
僕の体は簡単に転がる。
「さっさと来い、飯の時間だ」
そう言って、奴隷商は立ち去る。
「けほっ……はぁ」
「大丈夫か?」
「心配、いらないよ。君は大丈夫?」
「ああ、走れる。でも…」
震える足を押さえて立ち上がると僕はそう言った。
【HP】28/42
………三分の一もっていかれた。やはり奴隷商にとっては替えの効く商品程度にしか見られていないのだろう。
「なら、行こうか」
足を一度バシンと叩いてから出来るだけ急いで、商人の下に駆け出した。
白髪の少女はその様子を、心配するような目で見ていたのだった。
「飯の時間だ、並べ。」
奴隷達は既にいた。沢山の少年少女が列を作り、先頭は人数に対してかなり小さな鍋から何かを貰っていた。
見渡して気づいたが、どうやら奴隷達には、あまり年の取った人は見当たらない。見た感じでは未成年ばかりだ。
誰もが疲れたように、絶望的な表情をしながら並んでいた。
既に奴隷商に屈服している、と言うことなのか。それとも────
「早く受け取れ」
そう言った奴隷商に、渋々嫌そうな顔をして受け取る奴隷。
一瞬、腕輪が光り、フラつく奴隷。
奴隷は受け取っていた小さなお椀をひっくり返す事無く、もう一度ふらふらと立ち上がると、他に受け取った奴隷達と同じところへと向かっていった。
─────この飯か……。
「君、キョロキョロし過ぎ。商人に睨まれてるぞ」
「あぁ本当か、ごめん」
呆れたように肩をすくめる白髪の少女。
僕はふと思い付き、聞いた。
「そう言えば君の名前は?」
「喋るとまた叩かれるぞ?」
はっとして、口を噤む。
「ははっ……、全くそこまで怯えなくてもいいだろ?」
「そこ喋ってんじゃねぇぞまたやられたいのか!?」
その言葉で、白髪の少女もはっとして口を噤んだ。
僕は自然に頬がゆるむ。
何だかこのやりとりがちょっとおかしかったから。
────でも飯は不味かった。




