忠言の通りにするまでもなく
あの後、サイトーさんは指を四角に動かした後、険しい顔で何処かへと用があると行ってしまった。
何か思い詰めていたようにも見える、けれど僕はとくに気にも留めたりはしなかった。
歩きながら、僕はサイトーさんに言われたことを思い出す。
思い出して、考える。
───この国から早く出て行った方が良いという言葉の意味を。
「にしても、賑やかだなぁ。」
賑やかな大通りを歩いていて、独り言を呟く。
おかしいな、元々こんなに独り言言うタイプじゃなかったはずなのに。
まあ、この陽気な大通りを無表情で黙って歩くのも良くない気がするので、自分では気にしないが。
そして先程作った冒険者カードを天に掲げて、適当に歩きながら見ていた。
「そう言えば、さっき、解析がどうとか言ってたけど……聞きそびれたな」
そもそも、この世界はどういう世界なのだろうか。
全く、常識を教えてくれよってね。
「───お嬢さん、ちょっと」
ふと声に反応しそちらを見ると、黒い髭と髪をボサボサに生やしでっぷり太ったおじさんが下品な笑顔で手招きをしていた。
「君だよキミぃ~」
なんだあれ、気持ち悪い。
気付けば、人通りのない道である。冒険者カードを見ながら歩いていたから、どうやってここにきたか分からない。
けれど、何だろう。ゴブリンに見つかった時以上の悪寒を感じた。
「えっと……。」
周りを見ても、僕以外は居ない。
「ふすー。」
大きな鼻息。何だろう…それだけしかしてないというのに…怖気が…?
原因不明の悪寒。人通りのない道。
手招きしているおじさんにゆっくりと近付く。
「よぉし、今だ、やれ」
次の瞬間、視界が真っ暗になった。そして後頭部に衝撃。
「よくやった。出荷するぞ」
何のこと………だ……。
僕の意識はすぐに手放された。




