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異世界

「生きてる…」 


 死への恐怖から解放されたことにより安心したためかそう言葉が漏れた。


 2本の灯篭のようなもののおかげでこの部屋はとても明るい。


 辺りを見渡すとここも石で造られていて、目の前には祭壇のような所があり灯篭はここ手前に設置されていた。だがそれ以外何もないシンプルな部屋の中央にいた。


 しかしおかしい、僕が落ちてきたはずの頭上には人ひとりが落ちてこれるほどのスペースすら空いておらず、一面石で覆いつくされていた。


 出口がなく入口すらもなかった。何か仕掛けがあるんじゃないのかと思い、四角く囲われた部屋の壁を隅々まで触ってみたり押したりして確かめてみる。だが、何も起こらない。


 次に祭壇を調べてみるが壁と同様に何も起こらなかった。


 閉じ込められていることを理解した。


 最悪だ…せっかく助かったと思ったのに。今度はここから出られないのかよ。

助けなんて来るはずがない。地下深くのこの部屋のことを知っている人なんかいるはずがない。

 

 それにしても不思議だあの時どうして急に止まったんだろ。もしかしたらこの部屋のことを知っている人がいてその人が落ちてきている僕を救い出してくれたのか?まあ、さすがにそれはないか。


 なら、別の世界にとばされたとか?まだこっちのほうがあり得るかもしれない。

なにせ、僕とあのマントの人物にしか見えなし触れないであろう扉を通ってきたわけだかからな。


 どういう経路で入ってきたにせよ入って来れたなら


「出る方法だってあるはずだ」

 

 自分に言い聞かせるように最後の部分だけを声に出していった。


『もうしばらくお待ちください。今準備中です』

 

 自分の言葉に対しての返事をしたかのように女性の声が頭の中に響いた。


「だ、誰だ!誰かいるのか」

『案内人です』

「――――ん?君は誰でどこにいる?君がここに連れて来てきたのか?」


 僕は戸惑いながら見えない相手に聞く。


『はい。私は迷宮への案内術式です。今の颯太様では認識できません。先ほど颯太様が扉に入られたので協会に確認したところ新規の冒険者だと把握しました。なののでこの待合室へと案内させていただきました』


「なんで僕の名前を知っているんだ?迷宮、術式、冒険者、協会、それってなんのことだ?」


『はい。扉に触れた時点で冒険者への登録は完了しています。ここに連れてくる際に登録情報を読み取り拝見しました。ただ、時期が違いすぎたので協会へ確認させてもらいました。そのほかは登録されてないのでお答えできません』


「登録されてないって……。な、なら冒険者と協会のことだけを教えて」

『登録されていないのでお答えできません』

「どういうこと、さっき言ったすべてが何か知らないの?」

『はい』

  

 何もわからなかった。案内人は何一つとして知らないようだった。


 しかし、出る方法くらいは知っているだろう。そう思い聞こうとしたとき。案内人の声が頭に響く。

 

『準備が完了しました。微力ながら青銅の剣を送らせていただきます。御武運お祈りいたします』

  

 とだけ言い残し案内人の声は消えた。

 

「いや、待って、待ってまだ聞きたいことは沢山あるって!」


 しかし、返事は帰って来ない。


 ふと祭壇を見ると、手前に剣が置かれ奥には人ひとりが入れるであろう青紫色をした空間が出来上がっていた。

 

 ってことは、本当に冒険者というやつをしないといけないのか…。あの扉に描かれていたような生物と戦わないといけないのか。


 絶対に無理だっ! 


 勝てるわけがない。


 でも、どのみちここから出なければ餓死してしまう。


 それなら体力があるうちに戦ってみたほうが一番いいよな。もし生き残れたら、あのとき僕をここに突き落とした人物をさがし出して帰還方法を聞くことにしよう。だから今は生き残ることだけを考えよう。それに、早く帰らないとみんなが心配するしな。

 

「よし、いくか!」

 

 勇気を振り絞り、右手に剣を持つ。思っていたよりもずっしりとしていて長時間持っているのは厳しすぎる重さだ。

 

 僕は、剣を強く握りしめ青紫色の空間へと踏み出す。

 

 

 

「あ゛ぁぁあ゛ぁぁぁあ゛ぁぁあ゛ぁぁぁぁ」


 頭が砕けそうなほどの激しい頭痛に襲われ倒れこんでしまう。


 い、意識飛びそうだ。


「あ゛ぁぁぁぁぁぁぁぁ」


 僕のことなどお構いなしに痛みはつづく。


 おさまれ、おさまれ、おさまれ、おさまってくれ……もう耐えられない。


「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 願いがつうじたのか痛みが少し弱くなった。


「がはっ――――」


 だが次は胸を切り裂かれるような感覚に襲われる。しかし、その痛みはすぐに治まる。

 それと同じくして頭の痛みも引く。すぐに胸を触ってみるがどこも切り裂かれてなどいなかった。


 気づくと僕は森の中に居た。ところどころで木漏れ日が射していたのでまだ夜にはなっていない。よく見ると制服から使い古された布を縫い合わせただけの服に靴は皮一枚で作られているおり、とても何かと戦えるような服装ではなかった。


 だけどここまでありえないことが立て続けに起きているとなると、僕は迷宮にいて冒険者というやつをしているんじゃないのかと思ってしまう。


 立ち上がり辺りを見渡すとたくさんの木々がうっそうと生い茂り様々な生き物の鳴き声が聞こえてくる。


 早く人を見つけよう。一人でこんな所にいたら生きて帰れない。だが、どこに行けばいいのかわからないので周囲を警戒しながらとりあえず前に進む。


 草木の生えてのない場所にでた。ここなら何か来てもすぐにわかる。

休憩しよう。だいぶ歩いた。剣のせいで腕が疲れる。重労働だ、これがいつまで続くか分からず周囲も警戒しないといけないとなると、気が滅入ってしまいそうだ。


 それにしても人がいない。人がいるのかさえも不明だ。早く見つけないと夜になってしまう。


ガサガサ、ガサガサガサ


 近くの茂みで何かが動く音が聞こえる。とっさに立ちあがりその方向を向き両手で剣を構える。


 茂みの向こうから、薄汚れた緑をした腰くらいの高さの人型の生物が出てきた。

 それは斧を持ち、とんがった耳に鋭いきば、ガリガリに痩せていて飢えた野獣のような眼こっちを見ている。


「ミタモイツ、クノルケ、イガ」


 何か言っている。なんて言っているかわからないが、この言葉に引き寄せられるように同じような奴が僕を囲うようにたくさん集まってきた。

 

 逃げれない…ざっと見て30匹はいた。勝てるのかこの数に。勝てるかもしれない。敵はかなり小さいし。斧にさえ注意していれば問題はずだ。

 剣を構え目の前の生物近くまで走り出す。動き出したことにより囲っていたすべての生物が僕に向かって走り出す。


 うわぁ、一気に来るのかよ……そう思いながら目の前まで来ていた3匹を薙ぎ払うように剣を振るった。3匹は喉を掻き切られため僕に返り血をつけその場に倒れこむ。


 本当に弱かった。


 すると、3匹はなぜか光に包まれ球体となり地面に吸収されそこには、骨と鉱石のようなもの、何が入っているかわからないが布地の袋が数個ほど落ちていた。


 拾っておこうとも思ったが、まだ戦いは終わっていない。それは後だ。


 すぐにほかのやつ警戒したが、なぜか立ち止まり話をしていた。話がまとまったのか、1匹のもとに集まり、その1匹がほかの奴を取り込んでいく。すごく気持ち悪い。元の姿など留めておらずぐちゃぐちゃと音を立てながら肉の塊へと変わっていく。それはだんだんと大きくなり姿かたちは同じだったが3~4mほどの大きさに変化した。


 でかい…あまりの大きさと容姿のせいで怖気づいてしまい少し後ずさりしてしまう。


「ウォォォォォォォ―――」


 それに気づいたのか、野太い声をあげ、斧を振りかぶりながら変化前と比にならないほどのスピードで迫ってくる。


 避けきれない。とっさに剣を斧の軌道線上にもっていき後ろに跳び身を引こうとする。


「うぁぁぁぁ――――」

 

 しかし、圧倒的な力の差により剣は弾かれ、左腕を引き裂かれてしまう。

 

 意識が朦朧とする。立っているのですら危うい。

 

「ウォォォォ――――」


 止めを刺すかのように敵が迫る。


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