8/33
2-2. 脱走
予想していたよりも切断時の出血は激しくなかった。
彼女に加えさせていたタオルを取り出すと、相当な激痛だったのだろう、歯形と共に血が滲んでいた。
俺は彼女に簡易な縫合と止血を施すと、自分の予備の制服を与えた。
彼女に腕に絡みついて顔を伏せるように告げると、門へと向かう。
俺は警備員にチップを渡して外出する旨を伝えると、警備員の冷やかしを背に受けながら、急いで門から離れていった。
街に辿り着くとすぐさまカードを現金化し、盗難届を出す。
新しい服を購入すると、今まで着ていた制服はカードを入れたままホームレスにくれてやった。
薬局で救急セットを買い求めると、駅のホームへと向かった。
出発が直前の長距離列車を見付けると、行き先も確認せずに個室を借りる。
個室に着いても気を抜かず、周囲に不穏な動きは無いか注意を続ける。
列車が完全にホームを離れたのを確認し、俺たちは漸くひと息付く事が出来た。




