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1-5. 彼女の決断
俺の問いかけに対し、彼女は初めて表情を暗くし、絶望を口にした。
確かに彼女の言うとおり、この研究所において天使が抜ける道は皆無である。
天使の生殺与奪の権利は研究者が握っていると言っても過言ではない。
実際、研究者たちは生意気な天使に対しては特に過酷な実験を重ね、気軽にその命を弄んでいた。
時には息抜きのため、射撃の的にしていることもあった。
この研究所において、天使が得られる自由など有り得ないのだ。
そう、〈天使が得られる自由〉は。
俺は彼女にある提案を告げた。
彼女は暫く悩んだ末、ゆっくりと首を縦に振った。
俺は彼女の背後に立ち
彼女の一族の証を
彼女の母性の証を
断ち切った。




