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1-4. 選択
背中に触れる感触に振り返ると、いつの間にか彼女の羽に包まれていた。
女性の天使の羽とは包容力と母性の象徴だという。
それは彼女なりに、子供のように泣き続ける俺を元気付けようとしてくれていたのだろう。
俺は彼女に包まれながら、確かに心の温もりを感じることが出来た。
暫く彼女の温もりに包まれて、ようやく心が落ち着いてくると、俺は彼女に対し、ひとつの疑問を口にした。
きっとその疑問は同僚からすれば馬鹿らしい事なのだろうが、俺にとってはとても大切なものだった。
俺の問い掛けに対し、彼女は不思議そうに問い返した。
「でも、貴方は辛いんでしょう?だったらそれを心配するのはおかしなことなの?」
俺はこの言葉を聞いた時、ひとつの決断をした。
今思えば、既に精神的に磨耗した俺は、誰かに縋り付きたかったのかもしれない。
確かに、あの時の俺は誰かの導きを求めていた。
俺は彼女に問いかけた。
「俺と共に、外の世界に戻らないか」と。




