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4-5. 最後の言葉

彼女は今にも消えてしまいそうな声で言葉を紡ぐ。

呼吸はか細く、息継ぎの度に言葉は途切れる。しかし、彼女の言葉は力強い。


彼女は血を吐くように紡ぎ続ける。いや、彼女が咳き込む度にベッドには赤い染みが広がっていた。それでも彼女は言葉を止めなかった。

彼女は語り終えると、そっと自分のノート『旅行記』を指差し微笑んだ。

そして彼女は眠るように、静かに目を閉じた。


俺はこの微笑みを忘れないだろう。

その微笑みは喜びと、悲しみと、温もりに満ちていたから。


気付けば頬が濡れている。

彼女ならば「さっき約束したばかりなのに……しょうがないなぁ」と呆れた表情を見せただろうが、もう誰も呆れる者はいない。

彼女から失われていく温もりを最後の一滴まで身体に染み込ませると、俺は彼女を丁重に弔った。

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