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3-7. 彼女の決意
いつからだろうか。
彼があの日のように辛そうな目をするようになったのは。
彼は気付かれていないつもりなのだろうが、全く隠せていない。
だって彼があの目をするのは、私を見ている時だけだから。
彼は何も語らない。しかし、そうなんだろう。
私は彼の重荷となっている。今度は心の重荷に……。
私は、彼から離れなければいけない。これ以上彼を苦しめるわけにはいかない。
それに私はもう―――だから。だから、早く離れなければいけない。
きっと彼がこれに気付いてしまったら、苦しめることになる。
場合によっては心を砕いてしまうかもしれない。
だから……
彼の寝顔を眺める。これが見納めだろうから。
彼の体温をそっと感じる。この温もりともお別れだから。
彼の温もりを感じるのはこれで三度目になる。それはとても落ち着く温もり。
私は彼にそっと囁くと彼から離れる。
その温かさを名残惜しく想いながら、すっと部屋を後にした。




