14/33
2-8. 献身
明日からの行動が決まると、今日は早めに休むことにした。
彼女に先に休むように伝えると、俺はすぐに出発出来るように準備を始める。
準備といっても特に手間取る様なことは無い。
荷物の確認と医療用品の残数のチェック、後は乾かした衣類を鞄にまとめていくだけである。
人里を離れた場所へ向かうのならば、緊急時に使用する食料や飲料水などを多めに入れておくのだが、現在の予定ではもう暫くは街を移動するのが主要な目的となる。
荷物がまとまった頃、背中に小さな衝撃を感じる。
振り返ってみると、生まれたままの姿の彼女がそこにいた。
俺は釘付けになる視線を何とか引き剥がすことに成功すると、努めて平静を装いながら、彼女にどうしたのか聞いてみる。
彼女は消え入りそうな声で呟いた。
私は何も持ってないから。
こんなに一生懸命な貴方に何も返せないから。
私にはこれぐらいしか出来ないから。
そうして、彼女は俺の背中に身体を預けてきた。




