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2-7. 彼女の負い目
「何かやりたいことはないのか?」
彼が再び聞いてきた。 どうやら思考が逸れてしまっていたようだ。
ええと、〈やりたいこと〉だったか。彼の意図は分からないが、まずは彼の質問に答えるとしよう。
私がやりたいことを告げると、彼は一言「じゃあ、今からそれをやろう」と言い出した。
彼は「身を隠すにも適している」などと頷いているが、私は開いた口が塞がらなかった。
彼を問い詰めてみると、どうやらこの後の行動に関しては何も考えていなかったらしい。
どうせ目的も無いのだかあら、まずは君のやりたいことをやろうと当然のように主張する彼に対し、私は呆れてしまった。
しかし、よくよく考えてみると彼は元々こうして逃げ出す必要が無かったのだ。
仕事自体は嫌だったようだが、別の仕事を探せば済み話だったでのある。
私のために人生を狂わせてしまった彼に対し、私は申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
彼は全てを賭けて私に尽くしてくれている。私には何も返すことが出来ないのに。




