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2-4. 背中の傷
彼女の肩甲骨の上にある、二つの傷。
その傷跡は彼女が天使だった証。
その傷跡は俺が彼女に加えたもの。
彼女は傷跡を撫でる俺の手に、そっと自分の手を重ねると、悲しそうな顔をしないでと呟いた。
「貴方は私を助けるためにそれを切ったのよ。だから、貴方は悪くないの」と。
「それに……」と、彼女は続ける。
「私の身体は傷だらけだけど、私の為の傷はこれしかないの。だから、私はこの傷を大切に思うことが出来るわ。」
彼女はそう言って微笑んだ。
俺はそんな彼女を眩しいと感じながらも、その顔から目を離すことが出来ずにいた。




