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プロローグ
流れるような白い髪。
透き通るような白い肌。
すらりと長い手足。
まるで人形のように美しい彼女の容姿に人々は思わず振り返る。
こんな暑い時期に袖の長い服を纏い、手袋を嵌める彼女の服装は珍しかったが、不思議な事にそれがおかしいと感じる事は無かった。
人々は彼女に見惚れ、彼女のすぐ側から放たれている突き刺さるような視線に気付くと、慌てて目をそらす。
***
彼女を興味深げに見やる視線を感じる度、そちらを睨みつける。
彼女は好奇の視線に晒される事に慣れていない。
副作用で脱色された白髪。
外の世界を忘れていた脆弱な皮膚。
筋肉の退化した細い四肢。
手首や足首には鉄の色が移っており、胴体部には実験の痕が無数に残っている。
肩甲骨の上にある切断痕を服の上からなぞると、彼女は可愛らしい悲鳴を上げた後、こちらを睨み付けていた。
俺はこの傷跡の事を決して忘れないだろう。私が切り落とした、彼女の羽のことを。




