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◆闇の中で輝くレッドアイ

◆闇の中で輝くレッドアイ


 そこは、とあるホテルの一室。

 薄暗い中、バイオレットの明かりだけが、その場を照らしていた。

「それで……ここに来たって?」

 上半身何も纏わぬ彼は、ゆっくりと身を起こし、ベッドの背に体を預ける。

 その彼の傍らには、美しい女性がいた。


 どこの誰だかは、彼自身もよく知らない。

 ただ、この喉の渇きを癒してくれるのなら、誰でも良かった。

 この苦しみをつかの間でも、忘れてさせてくれるなら、誰でも良かった。


 ベッドの中で、彼女は気持ち良さそうに微睡んでいる。

 生まれたままの、その姿で。

「ええ、これは契約にはなかったものですから」

 ベッドの側で立っていた、不思議な仮面をつけた男が、ぺこりと頭を下げた。

 ---------まるで、道化だ。

 奇妙な目が描かれたピカソのような仮面に、その仕草、口調に。

 道化をそのまま実体化したような、そんな男だった。

 仮面の男の隣には、あの旬を狙ったフィレールの姿も。

「そんなこと言われても、オレは知らないんだよね」

 彼は赤い髪を掻きあげて、面倒くさそうに答える。

「報酬、少し上げるから、まとめてやっちゃっていいよ」

 枕元にあった契約書のカードの数値を追加すると、それを仮面の男に投げてよこした。

 仮面の男は、そのカードをしっかりと受け止める。

「……確かに」

「じゃあ、頑張って。これでも君達には期待してるんだから」

「ありがとうございます、咲様」

 そういって、下がろうとする仮面の男を咲と呼ばれた赤毛の彼が呼び止める。

「そうそう、そこの彼女。飽きたらオレに知らせてよ。優しく可愛がってあげるからさ」

「わかりました、覚えておきましょう」

 仮面の男の言葉を聞いて、咲は側にいた彼女の唇を奪うと、仮面の男はもう用無しと言わんばかりに、ベッドに潜り込んだ。

 仮面の男とフィレールは、ぺこりともう一度、頭を下げて、部屋を出て行った。



 外はすっかり夜模様。

 ネオンサインが眩しいホテル街を抜けて、ショッピング街へと向かう。

「………あのひと、嫌い」

 仮面の男の服の裾を握って、フィレールは呟いた。

「そういうなよォ~、あれでも良い金鶴なんだからさァ」

 いつもの口調で、仮面の男は言う。

「だって、僕のこと……ねえ、カスラ様、僕のこと、あの人に渡さないよね!?」

「何言ってんだ、お客に合わせてやっただけだ」

 仮面の男、カスラはそう答えた。少しそれが本音のようにも聞こえる。

「よかったぁ~!!」

 ほっとした顔で、フィレールはそのままカスラの腕に抱きついた。

「まァーとにかく、金も増えたんだ、良いもん食ってから、もう一度トライすっか」

「あ、待って」

 フィレールは少し背伸びして、カスラの仮面を少しずらして。

 ちゅっ。

 唇を重ねた。

「お、おいおい」

 すぐさま、仮面を元に戻すフィレール。

「だって、したかったんだもん」

 またカスラの腕にしがみつき、上目遣いで頬を染めながら微笑んだ。

「ま、いっか。減るもんじゃねェ~し」

 二人の足音が、星空の下、ゆっくりと遠ざかっていった。


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