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◆現われたのは天使か悪魔か

◆現われたのは天使か悪魔か


 リュートの授業が終わった後、旬は講義室でクラスメイトと話をしていた。

 他愛のない話だ。

 そうやって時間を潰し、ダイブしているだろうリュートが戻ってくるのを待っていた。

「確か、今日は新しいプログラムを見せてくれるんだったな」

 思わず呟くもクラスメイト達は聞いていなかったようだ。


 と、そこで講義室の扉が開いた。

「こんにちはー。その、神楽間かぐらま旬さんって方、いらっしゃいます?」

 扉をあけてやってきたのは。

 眼鏡を掛けた女性。

 しかも、先生でも生徒でもない。見たことも無い女だった。

 地味な印象を受ける女性であったが、一つ気になるといえば、男の目を釘付けにしそうな、その谷間の見える豊満な、豊かな胸だろうか。

 紫色のルージュが艶かしく、唇を彩っていた。


「俺だけど……」

 突然現われた女性に戸惑いながらも、旬は何とか声を出した。


 -------------なぜ、俺の名を、知っている?


 ぞわりと、背中に寒いものを感じた。

 言い表せぬほど気味が悪いのは、気のせいだろうか?


 紫色の唇が、言葉を紡ぎだす。

「よかった。僕、すぐ見つけられなかったら、どうしようかって思っていたんだ。見つけられなかったら、カスラ様に怒られちゃうし」

 だから、と続けて、眼鏡の彼女は微笑んだ。


「死んでくれないかな?」


「えっ!?」

 何を言っているんだこいつは!?

 そう言い終える間もなく。


 シュンッ!!


 ふわりと舞うのは、旬の髪。

 間一髪。

 旬は、その左手から飛び出した刃を躱した。

 手袋で隠されていて気づかなかったが、今なら分かる。

 彼女の左手は、義手だ。


 周りでは、クラスの女子がきゃーっと叫んでいる。

 男子も驚いて、俺から避けてるくらいだ。けれど、どちらも外に出ないところを見ると、この騒ぎを見ていたいのかもしれない。

 刺激の少ない学園で、この騒ぎは、いかにスリリングなものなのか。


 いや、今はそれを考えているときではない。

 頭の中で首を振り、もう一度、思ったことを頭に思い浮かべた。


 ---------なんで、俺が死ななきゃ、いけないんだ!?


 何度も旬を狙っていた左手の刃。

 それが旬を傷つけることはなかった。

 傷つけられたのは、彼の髪と服くらいだ。

 大きな一振りを、旬はまた、何とか躱した。

「案外、機敏なんだね、君」

 その手を止めて、彼女は旬を見る。

「あ、諦めてくれた?」

 その言葉は、旬の願いも込められていた。

 これで、終わりますようにと。

 だが彼女は、もう一度微笑んだ。氷のような微笑で。

「まさか」

 そういって、かしゃんと左手の義手を外した。

「でも、これなら……どうかな?」

 そこに現れたのは、キラリと輝く、レーザーガンの銃口。

「そうそう。これね、カスラ様に付けて貰ったんだよ。女の子は何かと危ないから、お守り代わりだって。お陰でいろいろ役立ってるんだよね」

 ぴぴぴという音と共に、銃口の先に光が集まってゆく。もうすぐ、放たれるのは。

「しかも、相手を外さないんだ。凄いでしょ?」

「なっ!!」

 旬の叫び声と共に、閃光が走る!


「そうはさせませんっ!!」

 何が起こったのか、わからなかった。

 旬に来る筈の衝撃、それはなかった。

 旬の目に飛び込んできたのは、黒いワンピースと、長い黒髪。

 旬と同じくらいの、少女。

「……!!」

 声にならない声が漏れる。彼女の名を呼びたかったが、旬はまだその名を知らなかった。

 少女がゆっくりと後ろに倒れる。

 後ろからでは見えなかったが、先ほどのレーザーで焼かれ、真紅に染まったワンピースが容易く想像できた。

 手を伸ばそうと、彼女を抱きとめようと触れようとしたとき。


 少女はびくんと振るえ、起き出した。

 何事も無かったかのように、むくりと立ち上がり。

「すみません、失礼します」

 ブーツの踵を鳴らして、旬を抱きかかえた。

 同時に聞こえるのは、機械的な声。

『反重力システム作動』

「え、ちょ、ちょっ!!」

 もう、何が何だかわからなくなっていた。

 ただでさえ、豊満な眼鏡な女性に狙われていた。

 次は、華奢な少女に……抱きかかえられている!?

「しっかり捕まってください」

「あ、はい」

 思わず、少女の言いなりに抱きつくと。

 ぱりーんっ!!

 そのまま少女は、講義室の窓ガラスを蹴って、外に飛び出した。

 ついでに言うと、4階から。

「うわああああああ!!!」

「あまりしゃべらないでください。舌を噛みますよ」

 少女はこんな非常時でも落ち着いているようだ。

 すぐさま近くに生えていた木の幹を蹴る。

 目の前にあった建物の屋根に飛び降りる。

 そしてまた、次の屋根に向かってジャンプ。

 それは、まるでどこかの怪盗を思わせる軽業であった。

 こうして旬と少女は、無事、その場を逃げ出すことに成功したのだった。


「ちょ、ちょっと聞いてないよー」

 左手を元に戻して、彼女は壊れた窓から旬達を見送っていた。

 これから追うべきか、それとも指示を仰ぐべきか。

 一瞬、思案したときに、胸の谷間で震える携帯電話に気づいた。

 すぐさま、彼女はその電話に出る。

『カスラさんですよーっとォ』

「あ、カスラ様ぁ~☆」

 とたんに彼女の頬が緩むのがわかった。

『どう、フィレール。調子は?』

「あーん、聞いてくださいよーう。変な女がジャマしてきて……でも、ターゲットがどんなヤツなのかは把握しました」

『変な、女ァ~? 何だそれ、聞いてない、聞いてないぞッ!!』

「ですよね、ホンっと困りますよね」

『とにかく、早く戻っておいで。続きは後だ。依頼主に聞いてみよう』

「はーい、じゃあ、すぐ戻りますね」

 ぴっと電話を止めて、彼女を凝視する学生達を睨みつけ。

「ちょっと、こっち見ないでよ。見世物じゃないんだから!」

 そう叫んで、左手の甲を触る。

『転送ゲート、オープン』

 機械的な声が響いた。

「座標、カスラ様の下へ」

『ラーサ』

 その言葉を残して、彼女……いや、豊満な眼鏡のフィレールは、消えるかのように移動して行ったのであった。


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