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◆めまぐるしい逃走劇

◆めまぐるしい逃走劇


 その日は、朝から厄日だった。

 エルシィに連れられて、俺は、とあるホテルに泊まっていた。

 しかも……。

「いやあ、こんな部屋、久し振りだよ」

 大きなベッドが二つある。

 大きな応接間の備えてある。

 バスルームもでっかい。しかも夜景が綺麗だった。

 で、リビングルームには、大きなソファーと大きなテレビまで完備(ソファーは応接間のとは別!)という、いわゆる、スイートルームってやつだ。

「でも、エルシィさん、ここ、凄く高いんじゃ……」

「子供はそんなこと気にしない! ……まあ、緊急事態だからね。めったに使わないカードを使わせてもらったから、それほど掛かっていないよ」

 そういえばと、俺は思い出した。

 このホテルにチェックインする際に、エルシィの取り出した黒いカード。

 それを見た途端、フロントにいたマネージャーの表情が固まったのを覚えている。

 明らかにそれは、『特別な』何かだった。

「エルシィさんが、いいっていうなら、いいけど……」

 とはいっても、そろそろ俺もこの服、着替えたいなと思う。

 ずっと同じ服というのも、かなり気になるところだ。

「そうそう、あんたが寝てる間に、朝のルームサービス頼んでおいてから……」

 そうエルシィが告げたときだった。

 ピンポーン!

 玄関から呼び鈴の音が響いた。

 噂をすれば、なんとやら、らしい。

「ちょっと貰ってくるから」

 嬉しそうにエルシィが駆けて言って。


 もう一度、言おう。

 今日は朝から、厄日、だった。



「旬、隠れろっ!!」

 朝食を取りに行ったはずのエルシィがすぐに戻ってきた。あっという間だったと思う。

 エルシィが側にあったソファーに身を隠して、俺もその後に続いたとたん。


 バババババババッ!!!


 え? ま、マシンガン、ですかぁ!!??


「やあやあ、旬君。お目覚めかな?」

 それはあの仮面男の声だった。そう、昨日の朝、バズーカーを撃ち込んで来たあの仮面男。

「そんなので、撃たれたら、誰だって目を覚ます!!」

 いや、下手したら死ぬ。

 良く見ると、男はいつの間にか部屋に入ってきていて。

 彼の隣には、マシンガンを構えたポリスロボが2体いた。

 ポリス、ロボ……だってっ!!??

 都市の人々の安全を守る善良なロボットが、なんで、仮面男の言うことを聞くんだっ!?

「旬、合図したら、窓から降りるから」

「へっ!?」

 僕の胴体をがっしと掴んで。

「ワン……」

「何をするというのです? もう逃げられませんよ」

 仮面男がゆっくりと、ソファーに近づいてくる。

「ツー……」

「さあ、今度こそ一緒に」

「今だっ!!」

 俺を抱えたエルシィが、窓を割って外に飛び出した!!

 地上45階の、窓から。


「うああああああっ!!!」

 ひゅうっと生暖かい風が、顔を撫でる。

「舌、噛むんじゃないよ」

 エルシィは、腕を壁に向けて、何かを撃った。

 打ち出されたのは、ワイヤーだった。

 それに支えられて、二人は急降下したが、すぐに止まった。

 そこから、3階くらい下の窓が、見えた。しかも、誰もいないようだ。

「せーの……」

「え、エルシィ……さ」

 勢いを付けたエルシィは、俺ごと、その部屋にダイビングっ!!


 カシャーーーン!!!


 二度目の窓割りに、俺も少しだけ慣れてきたように思う。

「……あっち……いくぞ……早く……」

 割れた窓の外から、声が聞こえた。

 急いでこちらに向かってきているようだ。

「まだまだ……」

 ワイヤーをそのままにエルシィは、その場で数を数えている。

「よし、戻るよ」

「ちょっ……」

 また、割れた窓からダイビング!!

 そして、今度は腕に付けたワイヤーを戻して、今度は45階に戻る。

「よっと。あ、旬。割れたガラスに気をつけて」

「あ、は、はい……」

 ふーっと息を吐いて、やっと地面の感触を味わうことができた。

 というか、高層ビルのワイヤーアクションは、今回だけにして欲しい。正直。

「今のうちにトンズラするよ」

「え? でも……」

「やつらに嗅ぎつけられたんだ、場所を変える」

 荷物を持って、エルシィは慎重に外を窺いながら、玄関から廊下へ出た。

 どうやら、彼らは下の階に向かったらしく、いないようだ。

「急いで、早く!」

 急かされるように、俺はエレベーターの前に行き、ボタンを押した。

 ちかちかとゆっくり上がってくるエレベーター。

 もうすぐというところで。

「いたぞ、あっちだ!!」

 もう戻ってきたらしい。遠くの廊下から声が聞こえた。

 ちーんという音と共に扉が開く。

 幸いにも、そこには誰も乗っていない。

 滑り込むように乗り込んで、すぐさま閉じるボタンを連射。

 やっぱりバリバリバリと、マシンガンを撃ってきたが、壁に身を寄せてしゃがんでいたお陰か、服が少し破けたくらいで、怪我はなかった。

「旬、5階から下、全てボタンを押して」

「わ、分かった」

 言われるままにボタンを押す。その間にエルシィは、いつの間にか、エレベーターの天井を開けて、上に上がっていた。

「旬、こっちだ」

「あ、上がるの?」

「もちろん」

 出された手に、なんとか届いて。

 俺もエレベーターの上に登る。

「ちっ、途中で降りたか」

 声が聞こえた。いつの間にか先回りしていたらしい。

 声を上げそうになった俺の口を丁寧にも、エルシィが塞いでくれていた。

 彼らがいなくなったところで、もう一度、エレベーターに戻り、地下へと向かう。

 そう、バイクを停めている地下駐車場だ。

「どうやら、居なさそうだ。今のうちに……」

 バイクを見つけたエルシィが、バイクに駆け寄ろうとしたとき。


 ドウウウウンン!!


 爆破、された。

 まだ、距離があったから、エルシィは、怪我をせずに済んだ。

 だがそれは、同時に移動手段を取られたことを意味する。

「どうもこんにちは、坊ちゃん」

 おどけた様に、仮面をつけた男がやってきた。さっきとは違う仮面。

 朝にあった男は、どちらかというと、目元だけを隠すような仮面であった。

 だが、目の前に居る男の仮面はどうだろう。道化師を思わせるような顔を覆う仮面。

 それが、奇妙に……そして、見た者に恐怖を与えるかのような威圧的な空気を感じた。

 思わず、俺は息を飲む。

「今度こそ、死んでもらうよ、旬」

 そして、もう一人。今度は学校であった、あの暗殺者であった。

「だ、誰なんだ、お前らっ!!」

 思わず、声を張り上げる。

「オットォ! これは失敬! 俺はカスラ」

「僕はフィレールだよ」

 ゆっくりと二人は近づいてくる。仮面の男、いや、カスラはその手に銃を持っていた。サイレンサーとポインターが付いたレトロな銃を。

「ひっ……」

「さァーて、死んでもらおうかァー?」

 そのカスラの声は楽しげだ。

「そ、その前に……何で、俺を殺すんだ!?」

「旬っ!!」

 ずっと気になっていた疑問。

 せめて、それだけは知りたい。

「頼まれたんだよ、ある『人』にねェ~」

 くるくると銃を弄びながら、カスラは答える。

「頼まれたって、誰に!?」

「それは言えないナァー。俺だって、命欲しいから。ねェ?」

「そうだよ♪」

 フィレールも、腕のアタッチメントを外して、銃の先を向ける。

「どうせ死ぬんだ、教えろ!!」

 死ぬ気になりながらも、俺はなおも声を張り上げた。

「どうします、カスラ様?」

「まあ、ここで死ぬんだから、教えてやってもいいか」

 二人は顔を見合わせ、にっと笑みを浮かべる。

「咲、狂井咲くるいさきだよ。狂い咲きなんて、オツな名前だよなァ」

「な、なん……だって……」

 それは、生き別れた……兄の名、だった。



 がくりと旬は膝を折って、その場に倒れこんだ。

 何も見えない、何も聞こえない、いや、届いていないのかもしれない。

 それほど、その『事実』は、彼にとって、深い衝撃を与えていた。

「旬、目を覚ませ!! 旬っ!!」

 エルシィが必死に呼びかけるも、気づいていない。

 このままでは、やられる。

 すぐさまエルシィが駆け出し、旬の盾に……。


 バシュン!!


 別の方から光線が放たれた!

 その光線は、カスラの手をかすめ、その凶器を落とさせた。

「な、何だよッ!! 人がいい気になってるって時にッ!!」

「カスラ様!!」

 フィレールはすぐさま手を戻して、カスラの手を見る。

 どうやら、出血はあるが、たいした怪我ではないようだ。

「エルシィ、こっちだよ!!」

 小さな影が、エルシィを呼んだ。

「あんた、もしかして……」

「話はあと、早く!!」

 エルシィは、旬を抱えて、背負うとそのまま、小さな影の跡を追った。

 小さな影は、薄汚れたフードのマントを羽織った、少年だった。

「こっちだ」

 準備されていたらしい、空いているマンホールから、地下道へともぐりこむ。小さな影は、エルシィが降りたのを見て、すぐさま、蓋をした。

 同時に中は暗闇に支配される。

 すぐさま少年が降りてきて、ペンライトをつけた。

 小さな光だというのに、どうしてこうも、安心するのだろう。

「ありがとうございました、クレイン博士」

「エルシィも、元気そうだね」

 フードから現われた顔。

 ヘアピンで髪を留め、そこから見えるのは、金色の瞳。

 そして、菫色した癖のある髪。ピンで留めていない左目は長い髪に隠れていた。

 マントの下には、博士らしい白衣が見える。

 どちらにせよ、博士と呼ばれるには、ずいぶん若い少年に、エルシィと旬の二人は助けられたのであった。



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