表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

◆何処かにある楽園

◆何処かにある楽園


 飛び込んでくるのは、輝かんばかりの緑。

 そして、色とりどりの花達。

 ガラス張りの温室の中には、人が楽しめるようにと、白いテーブルクロスの掛かったテーブルに、細かい細工が施された白い椅子が5脚置かれていた。


「あのじーさん、何してるんだ?」

 チャイナ服を着た金髪の青年が愚痴を零す。

 約束の時間を、1時間も過ぎていた。

 彼の手元にある暖かい中国茶が、冷め切っているのが、なによりの証拠だ。

 仕方なく、側にあったティーポットに手をかけたときだった。

「すまんな、憂苑ゆうえん。遅くなった」

 いつの間にか、その老人は立っていた。

 70歳のはずなのに、若く見えるのは、歳のわりに背筋が伸びているからだろう。

 物静かな雰囲気を纏いながら、ローブを着た老人は、ゆっくりと青年の隣に座った。

「それはこっちの台詞。何か問題でもあったんすか? アステリクのじーさん」

 憂苑と呼ばれた、金髪の青年は、新しい茶器に暖かいお茶を注ぎ、アステリクと呼ばれた老人の前に差し出した。

「少々、面倒な相手だったが、なんとか追い返したわい」

 ずずずっとお茶を飲んで、ほっと一息。

「やはり、ここの茶は上手いの」

「そう言ってくれるのは、じいさんだけだ」

 満足げに鳶色の瞳を細めるアステリク。その様子に嬉しそうに微笑む憂苑。憂苑には、そん憂苑という名があるのだが、ここでは、憂苑だけで呼ばれていた。孫と呼ぶのは、この場ではいない。そう、たった一人を除いては。

「で、追い返した後はどうなのよ?」

 ずずっと茶を飲みながら、憂苑は尋ねる。

「追い返しただけマシじゃな」

 ふうっとため息を一つついて。

「はあ、面倒だな。こっちも色々ガタ来てるからって、注意してんのに、あいつら全然動かねぇーもんな。姐さんの爪の垢煎じて飲ませるかって、マジ思った」

 その憂苑の言葉にアステリクは、笑う。

「仕方ないじゃろ。ここ人間は、現状の半分も……いや、4分の1も理解しておらんじゃろ。そういっていられるのも、今のうち、なんじゃがな」

「けど、そうも言ってられなくなってる」

 真剣な声色にアステリクは、眉を顰め、こくりと頷いた。

「サテライトレイだけで、対応しきれなくなっているのは、本当じゃ」

「マジかよ……プロトギアスを出さないとヤバイんじゃないのか?」

「そうじゃな」

「おいおい」

「お前さん相手に、嘘を言っても仕方なかろうて」

 瞳を閉じて、アステリクはまたお茶を飲む。

「で、あの双子は、何処に行ってるんじゃ?」

「それは……」

 憂苑が答えようとしたときであった。

「あーんもう、信じらんない!」

「失敗するなんて、なんてバカ?」

「こっちにあれだけちょっかいかけて、すっごい能力持ってたから、誘ってあげたのに」

「失敗するなんて、ホント、バカ!」

 ぎゃーぎゃー言いながら、トゥーラとシャーナがやってきた。

 すとんと二人は、揃って白い椅子に座る。

「何をしておったんじゃ?」

 アステリクに気づいて、二人はすぐに口を噤む。

「迎えに行ってたの。スペアの彼をね」

「でも、失敗しちゃったわ」

「自分で行かんかい」

 アステリクに言われて、二人はしょぼんとしつつも。

「だって、ねぇ?」

「ちょっと透けちゃうじゃない。恥ずかしいわ」

「こっちに呼べば? 向こうさんもこっちに興味あるみたいだし」

 憂苑のオッドアイが面倒くさそうに細められる。

「あ、その手があった!」

「けど、今更……ねぇ?」

 まだ何か言おうとする二人を。

「まあ、ええわい。とにかく、あの方が倒れる前に来てくれれば」

 アステリクがぴしゃりと止めた。

 ことんと、飲み干した茶器をテーブルに置く。

「お前さん達を呼んだのは、他でもない。あの男を起こしに行く」

「……賢明な判断だと思うぜ」

「そんなにヤバイの?」

「やだっ! わたし、まだやりたいこと、いっぱいあるのにっ」

「ウインドウショッピングに映画に、デートだってしたことないのにっ」

 また、きゃあきゃあ言い出す前に、憂苑が口を開く。

「とにかく、現状が厳しいことはよく知ってるはずだ。それにこっちも人手は多い方が」

「選択は多い方がええじゃろう」

 アステリクと憂苑が頷き、立ち上がる。

「じゃあ、がんばってね」

「わたしたち、ここで待ってるわ」

 いつの間にか、双子の側には、西洋風のドルチェが乗った皿が並べられていた。ご丁寧に紅茶まで。

「じゃあ、行きますか」

「そうじゃな。早い方がいい」

 男性陣二人は、楽園を後にする。

 その役目を果たすために。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ