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◆スタートライン

◆スタートライン



 ---------------カツン。

 波紋のように広がるように響くのは、高いヒールの音。

 黒いエナメルの、高いヒールのついたブーツが、軽やかにアスファルトの上に着地していた。

 黒のレギンス。機能性を重視した動きやすそうな、体にぴったりとフィットした、黒のワンピース。

 そして、ふわりと落ちてきたのは、長く艶やかな黒髪。

 地面を感じて、顔が上がる。

 開かれた瞳は大きく、淡い桃色であった。

 その唇が、嬉しそうに開かれる。

「ここが、3011……」

 彼女は、物珍しそうに、辺りを見回した。


 ------なんて素晴らしい。

 手を伸ばせば、すぐ届きそうな場所に。

 いや、そこかしこに。

 あふれている、『生』。

 耳を澄まさなくても、分かるほどの『生』。

 こんなにも、この街は、『生』にあふれている。


 ------ドクンッ!


 聞こえてくる。

 満ちあふれる『生』に打ち震えるかのように。


 ------ドクドクドクドク……!!


 この胸の鼓動が早くなる。

 まるでそう! 『生』に歓喜するかのように!

 収まることを知らないようだ。


 彼女は、そっと胸に手を当て、そして、歩み始めた。

 ------------------カツンカツン。

 ヒールを鳴らして、歩き出す。

 口元には、喜びに満ちた笑みを浮かべながら。


 暗い路地だというのに、なんてこんなにも素晴らしいっ!!

 スモッグで見づらい星を見て、彼女は笑いそうになった。


 この向こうには、あふれんばかりの『生』が、確かにそこにある。

 走り出しそうになる衝動を抑えながら、ゆっくりと光の先へ向かう。

 そう、彼女は新たなスタートラインを踏み出そうとしていた。


 ----------そのときまでは。


 バチンッ!!

 体が弾けるような。

 電撃が足の先から、頭のてっぺんまで突き抜ける。


 同時に、地面に倒れる衝撃を、彼女は感じた。


 -------油断した!!


 そう思ったときには既に遅く。

 視界が暗転するも、その意識はこれから起きることを入念に知らしめていた。

 動かそうにも動かせない、両手。両足。

 恐らく、彼女の死角から誰かがスタンガンらしきものを使ったのだろう。

「あうっ」

 何かが覆いかぶさったかと思えば。

「ぐふっ」

 頬や腹部に激痛が走る。


 悲しかった。油断しなければ、こんなことにはならなかった。

 こんなにも素晴らしい世界を前に、私は、こんなにも油断してしまった。

 予備知識として得ていた、暗い路地に要注意というフレーズが頭に過ぎる。

 けどもう、遅い。


 最期に訪れたのは、凍てつくような胸の痛み。


 私は忘れない。

 忘れるものか。

 私には、大事な使命があるのだ。


 --------そう、この手で、『世界を救う』のだ。




 所変わって、とあるアカデミー。

 そこに学生が集っていた。

 若い者も、老人もそこにはいた。そんな彼らが全て、学生であった。


 肩まで届く髪を乱暴に、後ろになびかせる。

 睫毛の長い、大きな瞳。

 自分の手の中にあるスマートフォンで、今日の講義時間を確認しつつ。

「あれ? 誰か呼ばなかった?」

 顔を上げた、その声は、やや高いものの確かに男のものだった。

「旬!! 遅刻するよ!!」

 呼び止められて、旬はすぐにアカデミーの建物の中へ、次の講義へと向かう。


 新たな時間。

 新たな場所。

 そして、彼らの物語が始まる。

 3011年の栄華を誇る、巨大都市・東京で……。

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