第6話 めんどうな奴ら
はあ、マジうざいんですけど・・・・・。
なんでこう立て続けにくるかなあ。
あの変な男は2、3日に一度は、あれからもやってきて、何故か私の担当のテーブルに毎度座るし。
ヨッコちゃんや他の子と担当かえてもらっても、必ず私のとこすわる、ウザッと思う私は悪くないよね。
これって、バイト仲間が私を売ってるか・・・・、皆の顔を思い浮かべ、ないな、とわかる。
信頼してるかっていうと、そうじゃなくて、皆そんなまめな人間じゃないからね、アホでもしない。
すると、答えは簡単。
あの男がくる前に先にいる人間が教えている、ってこと。
な~んて暇人!私はそちらの方をあきれるね。
あの日あの男の言った言葉、光light―ここで聞くにはありえない言葉。
この男が何故その言葉を、私の過去の呼び名を知っているかは考えない。
今さら考えても仕方ないから。
大切な古い友人に、私はあの掲示板をみろとメールがきた日の返信に「うさぎの絵」をつけた。
それは、とりあえず身を隠せ、という私達だけの合言葉。
あの日うさぎの絵を送った時点で、古い友人から、また別の古い友人へ伝言ゲームのように、私の指示はネットを通して広がったはず。
遠い所にいる友人に、光lightと呼ぶ男が出現した段階で、更に白黒だったうさぎの絵の、書かれている目だけは色をつけて赤く塗ったものをセカンドアドレス宛に送っている。
「もっともっと身をひそませろ。」という意味。
この赤い目のうさぎは、初めて送った、まさか送る日がくるとは考えてもいなかった。
必死に考え身をひそませているだろう友人を、友人たちを思い、私ができる事は、堂々とここにいること。
今さら私にこわいものなどありはしないのだから。
光lightという呼称を知っているのは当事者たちである私達と、あの男、ああ、それと、あの掲示板で行方がわからないとされていた関係者。
それなのに、この日本で私の前に現れた私の別名を知っている厄介そうな男。
ああ、本当にめんどうったらない。
まどろっこしいのも嫌いだしね。
けどね、けれど・・・・。
あの掲示板が、あの都市伝説がもし本当なら。
この国で平和ボケしている私へのちょうどいいジャブになった。
私は本当の意味で弱肉強食ってやつを知っている。
この平和な国に住む女子高生としては、どうなんだろう、とは思うけど。
ああ、自分の体温が、どんどん冷えてきているのがわかる。
今の私の顔はみせられたもんじゃなくひどく冷たい顔をしているんだろう。
これじゃダメ。
さあ、にっこり笑ってあの男の元に注文を取ってこよう。
いざ、私が振り返ると、女子大生どのがバイトの時間でちょうど入ってきた。
相変わらず、ヨッコちゃんのせいで、絶対そうだ!つんけんする彼女に、
「今日もよろしくお願いします。」
と頭を下げてホールに出る。
挨拶を返さぬ彼女に、私は生暖かい目で、君はそれでいいよ、うん、てな優しい気持ちになった。
例のテーブルに向かう私はいつもの私だった。