第5話 しつこい男
はぁ、私はため息をついた。
何故に花の乙女が辛気臭いため息をつかねばならないのか、そのわけは夏休みに入ってすぐにおこった。
順調に?期末テストは赤点の幾つかをいつも通りにとり追試やレポートに夏休み前の1週間は取られたが、無事にそれも終了し、バイト三昧の日々を過ごしていた。
その3日目に、バイト先のファミレスに黒いスーツもばっちりな10名ほどの集団が毎日現れるようになった。
私は別段気にしちゃいなかったが、ヨッコちゃんが、その団体で一番偉そうにしてる奴が、私をあからさまに見ている気がする、いいや、あれは見ている。
と、言いだし他の子もそう言えば、と言いだしはじめた。
そう言われれば気になるもので、私は自分の担当のテーブルに座った時は、それとなく見るようにしていた。
・・・・が、わからん、さっぱりこんだ。
何故に?
その疑問は昨夜見事解決した。
例の集団のその男が、初めて私に店で声をかけてきたから。
「ここには、あの飲み物はないのか?」と。
私が不思議そうに見ていたのが気に入らないのか、男がうっそりと笑う。
うん、どっかで?・・・私が怪訝に思っていると男がメニューを出してそのまま私に聞いてくる。
おすすめのデザートは何だ、と。
私は営業スマイルを浮かべメニューの幾つかを指で教えた。
すると、男の指がこれか、などと言いながら私の指を意図的に撫でていった。
その瞬間わきおこる鳥肌めいたものに既視感を覚え、私の嫌なものリストとして消去したはずの、あのカラオケ店での記憶の男がよみがえる。
あちゃー、この人か、いやいや、何であらわれるかな!
何でまたと思いながら、私は即効でもう一度この男を私の記憶から消去すべく、「ご用がおありでしたら、お呼び下さい。」と言いながらも、心の中では、まじもうこないよ、バカと思いつつテーブルを去ろうとした。
そこに小さな声で「光」lightと聞こえた。
私は何も聞こえないふりをして、そのままテーブルから立ち去った。
厨房に映る鏡には普段の私ではない誰かが映っていた。
あの男は、やはり危険。