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閉じた環  作者: そら
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第30話  やっぱりね

 妙に機嫌のいい高橋さんに連れられてきたけど、夜中だもん、そのまま私は見かけより居心地の良い部屋で寝させて頂きました。


 未成年バンザイ!だわ。


 翌日、焼きたてのパンの朝食をとらせていただいて、早速、事情聴取、もちろん参考として、の立場と身柄保護という名目も忘れずに。


 部屋には大勢いるもので猫かぶりモードの高橋さんなんて、全然問題外だし、この部屋に居合わせて話しを聞く連中なんて相手にする必要もないもの。


 なんで?どうして?という鬼気せまる雰囲気を綺麗にスルーする私。


 詳しい話しをそちらもしないのに、私が何も話す訳ないじゃん。


 大橋の方の顧問弁護士も乗り込んできてるはず。


 身柄保護の名目で何日私を手元に置いておくつもりかわからないけど、ギブ&テイクの原則は大事でしょ。


 クロに関して、矢継ぎばやに質問されても、当たり障りのない事しか答えない。


 

 「遊びじゃないんだ!」と大声を上げる、いかにもエリート然とした男。


 おえらさんの一人みたい、で、熱血、珍しいね。


 そして全然進展しないまま、午後になった。


 一人のいかつい人が私に、


 「繰り返しになるが、もう一度聞きたい。なぜ、君の元のバイト先の店長さんを調べて、と思ったんだか聞かせて欲しい。」


 それに私は、同じように答えた。


「ただなんとなく。」と。


 こうして朝から繰り返されるバカな質問。


 うぅっ、と誰かがうめくような声を出した。


 そして、


 「君は知ってるのか!あの世界最凶と言われるシリアルキラーが、この日本にいるんだ。頼むからちゃんと答えてくれ!」と声を荒げてきた。


 「あの駅前から消えて、どんなに探しても引っかからない、奴がその前に何をしたのか、パニックをおさえる為に報道規制をしているが、君も無事ではすまないかもしれないんだよ。」と。


 ふん、今度は報道規制をといたら、私がどうなるのかわかってるのか、と脅してくる。


 それなら、この国を出るだけ、ただそれだけだ。


 私には、何かに愛着するみたいな感情がない、私がいるところが、私の居場所、それでいい、そんな感じ。


 そういえば、あの仲間の一人が、いつかまたみんなでいる場所を作るといっていた。


 

 確かそこはもう完成しているはずだし、そこにいくのもいいし、本当にこの世界をフラフラと漂って生きるのも捨てがたい。


 

 何せ私の場合、お金とかに関する不安はない。


 稼ぎのいい仲間たちが、嬉々として差し出すさまが思い浮かぶくらいだ。


 まぁ、これっぽっちも自分で生きるぞ!っという気概がないのは情けないが。


 アルバイト程度なら、私だって稼げるけど、胸をはって言うことじゃないが、それじゃ世界放浪の旅はちと難しい。


 何せ、文化的生活しかおくる気がないから。


 お風呂や食事がままならないなんて、絶対いや、ない!


 そんなのもう子供の時だけで充分だもの。


 私がそんな役にもたたない事を考えてたら、別の、いかにも刑事って顔つきの人が、私の座る前までずかずかきて、私の顔の前まで身をかがめると、低い怒った声を出して言った。


 「さすが、お姫様だな!あいつの信奉者が、ダークプリンセス「闇姫」と呼ぶだけある。」


 「で、あいつが、あんたを追って日本にきた事はわかりきってる。あいつが自分から、あの国で自首したのも、あんたに言われたからだというのも、周知の事実だ。あんた何がしたい!」


 何か、止めようとした別の男の人を制して、続けて言った。


 「で、今回は、あんたの周りで人が死んでいく。教えてやろうか、お姫様、何がおきたかを!」


 私は、はじめて高橋さん以外に目を向けた。


 至近距離のその男を見ながら、


 「子供にやつあたりは、笑われるわよ。オジサマくらいの年の男は余裕がないと、もてないわ。それに私が何かするわけじゃないわ、間違えないでよね。」


 そう言って綺麗に笑って、そして言った。


 「教えてくれなくても、大体わかるわ。駅前の若いお兄さん以前にクロが自己主張したんでしょ。店長で。」


 そう言った時、クックと、やがて我慢を止めたというような爆笑が聞こえた。


 高橋さんだ。


 「なぁ、俺もこいつには言った事があんだ、だから嫁さんこないんだな、春ちゃんさすがだ。おい、聞いたな、余裕がないとダメだとさ。」


 うんうん笑う高橋さんは、けれどまた一瞬で雰囲気をかえた。


  猫かぶりをやめたのか、厄介だ。


 「春ちゃんから、前のバイト先の店長とかどうしてるかってメールきたろ、俺久々に盛り上がっちゃってさぁ、会議中だったんだけど、ぶっちして飛び出したわけ。」


 「あぁ、もういいよ、隠しても無駄だよ、俺に調べろって言った時点で春ちゃんは確信してっから。

ねぇ、春ちゃん。」


 そう言って私には優しく笑うと、何か言いたそうな部屋にいる他の関係者を、鋭い冷たさを添えた視線で黙らせた。


 いつもの貴公子然とした高橋さんしか知らない人は、驚いて高橋さんを見てる。


 でも幾人かは、やれやれ、といった雰囲気をしている、もちろん私の目の前まできて恫喝した男もその一人だった。


 本当の高橋さんを知ってる、いわゆる高橋さんの身内、仲間ね。


 「で、ね、春ちゃん、春ちゃんの思った通りだよ。店長の自宅は全員アウト。けど、あの女子大生はセーフだったよ。店長ともめて大学やめて地方に帰ってたからね。良かったよね、バカな不倫のあげく自分のキャリア、パーにしたけど、生きてられたよ。あ~、だけど代わりに、妹さんが大学入学を機に同居しててね、その子はアウトだった。真面目な良い子だったらしいよ。」


 「妹さんみたいに一人暮らしは見つからないのは、よくあることだけど、哀しい事だよねぇ。」


 そう言って天井をおおげさに仰ぐけど、あんた全然そんな事思ってないの、仕草と目の表情違うからバレバレだよ。


 あぁ、ここにいる高橋信奉者、きっちり騙されて、本当にせつなそうにしてる、バカだ。


 「店長さん一家、なんで発見ができなかったと思う?」


 子供のように嬉しそうに輝く目を私には隠そうともしないで私に問いかけてきた。


 「普通、異常が発見されるのは、ご近所からが多いんだ。あそこの家の様子がおかしいとか、あぁ親戚から連絡つかない、っていうのもあるけどね。子供が学校とかに行ってれば、そこから、ってのもある。」


 「親戚つきあいも殆どなくて、彼ら夫婦は一人っ子遠しの結婚でね、親御さんともうまくいってなくてねぇ。子供も小さいし。で、その身内からはなかったんだよ。それでね、肝心のご近所さんたちも通報するにもできなかったんだよ。」


 「向こう三軒両隣りっていうけど、それ以上にねぇ、彼がのっちゃったのか、ことごとくアウトにしてくれたんだよ。うん、そう。店長さん、小野さんの家を中心にさ、ことごとく周囲の家の人間までアウト。」


 「ちょうど休みも重なって、年よりが多かったのも発見が遅れた要因かなぁ。」


 他にも、高橋さんが何かしゃべってるけど、私は聞いていなかった。


 ショックとかじゃ全然ない。


 クロぉ~、何しちゃってんのよぉ~。


 そりゃあ、刑事さんも忍耐・・切れるかも。


 何で、こんなややこしい国で大量殺人なんてすんのよ。


 迷惑だわ、面倒だわ・・・、私が思ったのは、ただそれだけだった。


 報道規制かけといてよね、私は高橋さんに指をつきつけて宣言したのはいうまでもない。





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