第29話 あらら・・・。
私は嫌だけど、本当に嫌だけど、高橋さんに電話した。
留守電だったから、用件のみ。
元ファミレスの店長さんについて、安否を確認してくれと。
それがもう夜の話し。
いつものように庭園に出て、エベレストでも大丈夫だという最高級の寝袋に包まれて、まったりとしている時、外野が騒がしいのに気がついた。
ここは人の気配が濃厚で、この家に来て一番気に入っている所だ。
それが、普段と違って私の眠気を吹き飛ばすほどの勢いで騒がしさが近づいてくる。
いや、ね、私は人の気配を遠く感じるのが好きで、人自体が私に近づくそれは嫌いなんですけど。
そんな事も言ってられそうにないのは、嬉しそうに、この家の人間に警察手帳をふりかざし、ニコニコと、それはもうないほどニコニコと私の元に、その部下達と共に近づく高橋さんを見てあきらめた。
高橋さんは近づくと寝てる私を構いもせず、問答無用で抱き上げると、そのまま器用に寝袋をはがしながら玄関に向かい、こちらに近づこうとする大橋の人間達に、
「重要案件の関係者であるお嬢さんは、警察で保護される事になりました。もちろん公務執行中です。意味わかりますよね?」
そう言って彼らを蹴散らしていく。
どうやらビンゴだったらしい。
それにしても私が留守電を入れたのが夕食前、今は夜中も夜中のはず。
何が会ったのか、すぐに高橋さんの口から聞けるだろう、こんなに機嫌がいいなんて、ろくな事じゃないだろうけど。
こちらをきつく見つめる大橋の家のものに、私はクロをまねて、ヒラヒラと手を振って、高橋さんの車に乗り込んだ。