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閉じた環  作者: そら
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第27話  相互理解って?

あのあと高橋の奴は、あいつは奴でいい、本当に迷惑な奴だから。


戻ってきたオジサマを懲りずにからかって、帰っていった、笑いながら。


あれは本気で機嫌よく笑っていた。


まあ、何はともあれ、最後に私が売られるって線は消えた、これは私の願った「保険」でいいのだろうか?。


高橋さんに保険をかけとこうと電話はした、確かに。


けれど何か保険をかける相手を間違った感がビンビンする。


私をにらみつけるオジサマを見るにつれ、売られはせずとも殺されるんじゃないかってくらいの怒りの気配が大量に私に向けてふきつける。


うん、この殺気こもるまなざしも、正統派のもの、全然怖くないんだけどね。


私が珈琲のおかわりを、気にせずにするので、余計お怒りモードに火をつけた?って感じかな。


だけどね、ほらいつまでこの家にいるのかわからないし、ここで出される料理も飲み物も最高においしいの。


だから味わなきゃ損だと思うのよね。


どこも間違ってないよね、私。


私は珈琲を味わいながら、ゆっくり考えていた。


この人の妹、クロに殺られた一人なのか、さっき高橋さんが言ってたな。


ふんふん、それで復讐したいのね、ふんふん。


私が頭の中で遊んでいたら、オジサマがひどく張りつめた、怒りをおさえた声で私に声をかけてきた。


「俺は必ずあいつをこの手で血祭りにあげる。必ずだ。案の定お前がいる日本に奴はノコノコやってきた。お前を巻き込んでも誰を巻き込んでも、俺はやめない!」


そう私をにらみつけるそれは、綺麗な感情のこもるものだった。


私はコクリと珈琲をもう一口飲むと、ただうなずいた。


これっぽっちの関心もないから、それに。


それでもオジサマはじっと私を見つめたまま動かない。


どのくらいそのままでお互いいただろう。


この人が何の言葉を待っているのかわからない。


どんな言葉を待っているんだろう。


この人はきっと自分の感情に溺れたままなんだ。


妹さんをなくしてから溺れたままで全てを受け止めれない。


まぁだからなんだって感じだけど。


勝手に連れてこられたとはいえ一宿一飯の恩義っていうの?、ちょっとぐらい話ししてもいいよね。


「あなたはどうやってクロを殺るつもり?武器と数を揃えて?クロはそれじゃあダメだって海外で立証されてるわよ。自分だけはそんな間抜けじゃないって思ってる?」


私がここに連れらててきて、この急きょできたオジサマと言葉をまともにかわすなんて初めてじゃないかな。


それがクロの殺り方についてなんて、私、女子高生なのに終わってるよね。


あそこの建物の中で消えていくものなんて本当に簡単だった。


噂に聞くペットの処理場も、世間を意識してるのかどうなのか、意味なく清潔で明るくて、それはそれでちゃんちゃらおかしいけど、けれどそこにはせめてもという思いがあり、その理由もある。


けれどあの建物で行われていたのは、人の行う暴力でさえそこに感情があるというのに、クロの遊びでさえない、何の意味もないただたんたんと壊すためにのみ行われていた事だった。


夜の農場の中で鬼ごっこしていた時に見たクロは、まるで人間じゃないみたいに重力さえ感じさせないアクロバティックな動きをし、その細身にどうしてそれだけの力があるのかという怪力をみせつけていた。


人間の脳にはリミッターがあるらしいが、もしかしてそれを超えた存在がクロなんじゃないか、って私は思っている。


既に別種の生き物なのに、同じ人間として認識していては戦いにもならないんじゃないかなぁ。


「クロを殺りたいなら、せめて獣くらいに堕ちなきゃ無理じゃない?」


私が庭の方を見つめて、たまには人の為のアドバイスも、うんうん、いい事したかもって気分に思っていると、何を思ったかオジサマが私の方にのっそり立ち上がってきた。


ちょっとぉ近いんですけど!


私の座るソファーに両手をついて、その大きな体でおおいかぶさるようにして至近距離で私を見つめてくる。


お、お礼なんか結構ですともっ!そう言おうとした口を、そのままオジサマにふさがれた。


えっ、えっ・・・・。


次第により濃厚になるそれに、やっと意識が正常に戻った私が、私の口の中を蹂躙するそのからみつく舌に、思い切りかみついてやれば、口元から流れる薄く唾液と混じった血を手でぬぐい、ニヤッと色悪に笑うオジサマ。


「獣は得意だ。」


あんたバカですか!


けれど私のその叫びはまたも荒々しい口づけでふさがれた。





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